農業と福祉のお話その2−個性に合わせた作業

 

 

農福連携とは?

 

農福連携とは、担い手不足が深刻化する農家と障がいのある人の就労支援を行う施設が連携し、

障がいのある人が農家で農作業をする(作業委託や雇用)ことです。 

 

数年前からこの農福連携が推奨されるようになってきました。 

 

 

農福連携の前は?

農福連携が叫ばれるようになる前は、施設が自ら田畑を借り受け、耕作→収穫→販売までを行うことが

主流でした。  

 

障がいのある方の心身にプラスの効果があり、障がいのある人の工賃/給料が捻出できるとして

一時期盛んに取り組む施設もありました。 

 

しかし、農業を始める上で初期投資(トラクターや軽トラといった農業機械など)にお金がかかること、

作業時間が限られている中で作付けや管理に十分に手が届かず畑が荒れてしまいやすいこと、

収穫のタイミングや商品としての品質が落ちしてしまい「商品」になれない野菜が多いこと、

といった経営的な課題も山積していました。 

 

そのため、施設で農業に取り組むことが経営的に厳しい状況もあったようです。 

 

そこで、施設が自ら農業に携わるより農家から作業を受託することで、双方がwin-winの関係に

なのでは、ということになりました。 

 

 

 

農福連携の課題 

 

農福連携の取り組みが広がると、農家で農福連携に興味を持つところや

施設でも農業に興味をもつところが増えてきました(身近な人達を見てると)。 

 

ただ「さあ、始めよう!」とすぐに農福連携ができるわけではないと考えています。 

実際にすぐに始めて「やっぱり無理」と辞めてしまうところがあるのも事実です。 

 

原因としては、大きく2つのことがあると考えられます。

 

農家が障がい者に期待しすぎている 

 

障がい者=健常者と同じように農作業ができる、という誤解が少なからずあると感じています。 

この表現自体、誤解を生みそうですが、農家さんの中には残念ながら、

 

障がい者を人件費の安い労働者と考えたり、

助成金がもらえるから雇用すると考えている人がいます。 

 

そして、実際に作業を障がいのある人たちに行ってもらい、

「全然作業できないから、もう来なくていい」と連携が解除されたケースもあります。 

 

障がい者就労支援施設には、A型(雇用契約を結ぶ)、B型(雇用契約を結ばない)、移行支援型

といったタイプに分けられますが、いずれにしても「就労」を支援するところ。 

 

ですので、過度の期待や目論見はしないほうがよいと個人的に考えています。 

 

 

 

 

施設側が過度に期待しすぎていることも 

 

私自身が経験したことですが、施設と連携して農業をしていこうと考えたときにいくつかの施設さんに

お話を提案したことがありました。 

 

その中で連携したいという施設さんと出会うことができました。 

農業の経験は施設職員も施設に通う利用者さんもなし。

利用者さんの情報(農作業を行う上で最低限の情報:病気や性格、特徴など)なし。

最低賃金以上のお給料お支払い。 

 

この条件で1度受け入れを行いました。 

結果は「こちらで受け入れたいけど、難しい」とお断りしました。 

 

何のやり取りやすり合わせもせず、「農業のことはわからないのでお任せします」という職員。 

なんの情報もない中、手探りで個々の利用者さんのできる作業を模索し、調整。 

農業経営的な観点からは「大赤字」でしたし、施設との歩み寄りも難しいと判断しての

決断でした。 

 

施設としては、契約すればあとは農家が全てしてくれるという過度の期待があったようです。 

こういった施設は稀かもしれませんが、こういったことを経験した農家さんの中には

「もう障がい者とは関わらない!」と憤慨していた方もいるので、

注意が必要と考えています。 

 

 

農福連携を進めていく上で大事なことの1つ 

 

農福連携を進めていく上で、私が大事だと考えていることの1つ。 

それは、施設側とじっくり議論を重ね、時間をかけて、

障がいのある人の「個性にあった作業」を見出していくこと。 

 

まずはこれが大きな1つのポイントなのでは、と考えています。 

 

農家もそれぞれの農法ややり方、年間の作業、作つけ品目があり、

農家によってスケジュールも管理の仕方も異なります。 

 

MITUでは、市内のNPOさんと1年かけていろんな作業をしてもらいながら、

メンバーさん一人ひとりがどんな作業が得意かあるいは苦手かを見て、

職員さんと作業の流れを確認・調整しながら取り組んできました。

 

「◯◯さんが△△の作業するとき、こんな風にすると良いかも?!」

「この作業は苦手だから、あっちの作業してもらうとどうだろう?」

といったことを何度も。

 

そして、1年経ち、「この人たちに作業を委託しよう」と決め、契約しました。

 

 

 

個性にあった作業を見つけるために 

 

基本的には、施設から利用者の方が来たときには同伴する施設職員が

作業のサポートや指導を行います。 

 

MITUでは、施設のメンバーが作業しているのを遠くから覗いて、

どんな風に作業してもらうと作業しやすいか、

メンバーの得意な作業はどんな作業か、

といったことを見ます。

 

個性にあった作業を見つけるためには、

とにかく考えられうる作業をリストアップして、

その作業を細かく分解していきます。

 

例えば、種まきをする際には、 

 

1.種をまくラインにひもを張る

2.種をまく位置に印をつける

3.穴をあける

4.決められた種を穴に置く

5.穴に土をかぶせる

 

といった感じに。 

 

作業を細かく分け、それぞれの作業をしてもらうことで、

得意不得意な作業がわかることがあります。

 

MITUでは、年間を通して少量他品目の野菜を栽培しているので、

その時期その時期で作業の掘り起こしをしています。 

 

 

農福連携に向けて 

 

農福連携がある意味でブームになりかけている昨今ですが、

農家と施設がよりよい関係を築き、農家も障がいのある方も

いい方向に進むためには、時間をかけて進めていくことも

大切かな、と考えています。 

 

農家としては、ベースに「経営」があります。

施設としては、ベースに「福祉」があります。 

 

それぞれ違う立場から障がい者の就労支援を考えて、

「協働」していきたいですね。