オーガニックの野菜は安全?危険?

 

(2018年当時)栽培期間中、無化学農薬で野菜を育てていると、「オーガニックの野菜って危ないんじゃないの?」と聴かれることがありました。インターネットで検索しても「安全」と言っているものもあれば、「危ない」と言われていることもあるんですよね。

何故でしょう。

今回のブログでは、オーガニックの野菜が何故安心と言われるのか、危険と言われるのかをご紹介。
オーガニック野菜を選ぶときのご参考にしてみてくださいね。 

結論、栽培方法によって安全かどうかではなく、基本的には安全!

まずは結論です。

オーガニックであろうがそうでなかろうが、基本的には安全です。

安全の根拠としては、
多くの農家さんが(有機栽培で使用できるものを含む)農薬を用法用量通りに守って使用していること、
肥料についても適正量を施肥している農家さんが多いこと、
現在では多くの取引先さん(スーパーや直売所、仲卸、JA等)に栽培履歴を提出しており、何か問題があれば出荷停止になること、

が挙げられます。
多くの農産物は「安全」であるため、あとは野菜を購入する際に何を基準に「安心」できるかで選ぶのがいいのかなと考えています。

では、ここから何故、オーガニックの野菜が安全or危険と言われるのかを見ていきます。

オーガニックの野菜は何故、安全と言われるのか?

一番多いのは「化学農薬を使わないから」という理由が安全と言われる点ですね。
では、なんで化学農薬を使うのは危ないと言われるのでしょうか。

何故、化学農薬は危ないと言われるのか?

かつて(1940〜1970年台頃)は田畑に生き物がいなくなるほど農薬を使われていたようです。
農薬を撒く際に安全な服装で散布をしなかった人たちは体調を崩しました。
当時使われていた農薬も後に「毒性の強い」農薬として製造中止となったものもあります。

この頃の農薬のイメージが今までずっと尾を引いているような印象です。

今はどうなのか?

現在は農薬も進歩してきています。
化学農薬は安全性が確認できたら農薬としての登録ができるので、
人体に影響はない(少ない)と言われています。

この安全性の確認をする上では、ラット(ネズミ)などを用いた動物実験や
細胞をつかった実験で安全性を確認しています。

動物実験や細胞をつかった実験を繰り返し行い、議論を重ねた上で「問題がない」と判断しています。

ん?農薬は安全ってことなんじゃない?と思った方もいるかもしれません。

確かに化学農薬は動物実験や細胞実験などを繰り返し繰り返し行うことで人への影響がない(あるいは少ない)と考えられています。 

しかし、動物実験や細胞実験などで問題がなかったからと言って、人への影響がない(あるいは少ない)と言い切れることは難しいと考えられています。

とある研究者の方は、「動物実験などで安全性が確認されているけれども、農薬の安全性を確実に確かめるためには“人体実験”を行う他ない。しかし、それは倫理的に問題がある。だから、安全だと“考えられる”としか言えない」とお話されていました。 

このあたりは今でも研究が続けられ、わからないことも多いというのが率直な意見です。 

オーガニックの野菜は危険?

オーガニックの野菜が危険だとインターネットや書籍で目にすることがあります。
何故、危険と言われているのでしょうか。
少しまとめてみたいと思います。

有機質肥料が危ない=オーガニックの野菜は危ない?

オーガニックの野菜が危ないと言われる要因の1つに、オーガニックの野菜を育てる上で「有機質肥料」を使うからだと主張しているものがあります。 

何故、「有機質肥料」が危ないのか。

有機質肥料の中にはサルモネラ菌やO157等の病原菌がいる可能性があり、野菜を育てている途中でこれらの病原菌が野菜に付着。 
その野菜を人が食べることで感染症になる危険性があるのです。 

2005年〜2007年、十分に発酵していない堆肥からO157やサルモネラ菌が検出されたという研究報告がありました。 

しかし、十分に発酵させた堆肥ではこれらの病原菌が死滅しており、堆肥を製造する上できちんとした管理と十分な発酵が行われていれば問題がないと言われています。

また生野菜を食べる際に病原菌に感染する可能性があるため、野菜を食べる際には加熱するか、生食の場合は十分に水洗いなどをすることで防げると言われています。ちなみに、スーパー等ではこういった感染のリスクを防ぐべく、次亜塩素酸などを使用し、消毒をしています。

ここを誤解している方が多いので、ご注意くださいね。

有機農業であろうと慣行農業であろうと未熟な堆肥や肥料を使った野菜を生で食べれば、病原菌に感染する危険性はあります。

有機野菜は毒がある?!

農薬を使わずに育てた野菜は、野菜自体が天然毒や発がん性の物質を作ることがあり危険だという話もあります。 

この自然毒は野菜が外敵(害虫など)に襲われた際に自己防衛として天然の毒素を出すことがあり、これらの野菜を食べることは危険である、というのです。 

実際に無農薬や有機の野菜を食べると発がんの確率が上がるのかというと、調べた範囲ではそうでもないようです。
適度の野菜を摂取することで発がんの抑制になることは科学的にもわかっており、天然毒の影響よりも発がんの抑制が勝っていると考えられています。

ただ、自然毒については研究が非常に少なくわかっていないことも多いため、注意は必要かも知れません。
無農薬の野菜では虫がたくさんつくことがあるのですが、それが原因で毒素が多くなると言われています。 

硝酸態窒素が多い=身体に悪い?!

硝酸態窒素は、植物が成長する上で必要な栄養素と言われていますが、この硝酸態窒素を過剰に吸収した野菜が体に悪いという話があります。
摂りすぎると体内で魚や肉などのタンパク質と結合して発がん性のある物質になるため危険であるというのです。

いくつかの論文や研究報告を参照すると、硝酸態窒素が多いものを乳幼児の離乳食で食べさせると大変危険ですが、乳幼児以外が食べる分には大きな問題はないと言われています。
ただし、硝酸態窒素が多い野菜は、苦味やえぐみを感じやすいため、硝酸態が少ない野菜のほうが美味しいと考えられています。

この硝酸態窒素の施肥量については、有機農家は肥料を入れすぎていると指摘されています。
が、これは各農家のさじ加減である部分も多く、有機農家であろうと化学肥料を使う農家であろうと入れすぎている人はいるし、そうでない人もいるというのが現場感です。

最近では、直売所等でも生産者の栽培履歴をみることができるところが増えてきたので、気になるようであれば栽培履歴を見るのが良いかと思います。

まとめ

オーガニックの野菜が安全or危ないと言われている理由を挙げてきました。
結論、農法に限らず、農産物は基本的に「安全」であり、その上でどんな農産物が「安心」と感じるかという判断で農産物を購入するといいのかなと思います。
その際には、生産者が出している栽培履歴(生産履歴)を見てみるのもいいかもしれません。

個人的な見解としては栽培方法に限らず、健康に育った野菜を食べるのが良いのかなと考えています。

健康な野菜とは?

作物に合った土で旬の時期に土の養分をバランス良く吸収した野菜は、虫や病気が出にくくなります。
健康に育った野菜は、硝酸態窒素の値が低く、農薬を使わずにあるいは極限まで減らして育てることができるため、農薬に対する不安が少なくてすみます。また、自然毒についても影響は少ないんです。

このように健康に育った野菜を食べることが身体に良いのではないかと私たちは考えます。

いかがでしたか?農法に限らず、あなたにとって安心できる農産物と出会えるといいですね。

関連記事

  1. 震災から8年が過ぎた仙台沿岸の今

  2. 本当に栄養満点の野菜ってどんな野菜?

  3. 野菜と冷え性ー野菜の豆知識

  4. ビタミンCを知ろうー野菜の豆知識

  5. 自然農法、自然栽培ってどうなの?最近の自然栽培・農法事情

  6. 農福連携の難しさ-その1:福祉施設との関係について