農家が教える、さつまいもを美味しく食べるちょっとしたコツ|品種別おすすめ調理法

秋の味覚の代表格、さつまいも。
甘くてホクホク、ねっとりとした食感は、老若男女問わず多くの人に愛されていますよね。
「芸術の秋」「読書の秋」と並んで「食欲の秋」を連想する方も多いのではないでしょうか。
特に、私たち農家にとっては、畑一面に実ったさつまいもの収穫を迎える、まさに「芋の秋」なのです!

このブログでは、さつまいもを日々育て、その美味しさを知り尽くしている農家の私が、さつまいもを一段と美味しく食べるためのちょっとしたコツを、惜しみなく皆さまにお伝えしたいと思います。

え?このさつまいも、なんだかイマイチ…そんな経験ありませんか?

この記事を書くきっかけとなったのは、先日お客様との間で交わされた、さつまいもに関する何気ない会話でした。

私「先日は、当園のさつまいもはいかがでしたでしょうか?」

お客様「それがね、この前買ったさつまいもを焼き芋にしてみたんだけど、なんだか微妙だったんだよね。もしかして、ハズレの芋だったのかな?」

私「えっ、そうだったんですか?!それは申し訳ございません…もしかしたら、たまたま良くない芋だったのかもしれません(汗)」

お客様「でもね、その前に買ったさつまいもは蒸して食べたら、まるで栗みたいにホクホクしてて、甘さもすごくあって美味しかったんだよ!」

私「…?!あの、もしよろしければお伺いしてもよろしいでしょうか?その前にご購入いただいたさつまいもの品種は、〇〇という品種でしたでしょうか?」

お客様「ああ、そうそう!〇〇っていう品種だった!」

この会話を通して、私はある重要なことに改めて気づかされました。
それは、さつまいもの品種によって、最適な調理法が異なるということです。
これまで、私たちは無意識のうちに品種と調理法を使い分けていましたが、改めて考えると、この違いを知っているか知らないかで、さつまいもの美味しさが大きく左右されるのだと痛感しました。

そこで今回は、それぞれのさつまいもが持つポテンシャルを最大限に引き出すために、品種別におすすめの食べ方を詳しくご紹介したいと思います。ただし、ここでご紹介するのは、あくまで当園で育て、食べてきた経験に基づいたものです。同じ品種でも、栽培する生産者や土壌、気候などの環境によって、形や味わいが異なる場合があることをご理解いただければ幸いです。

知っておきたい!さつまいもの品種と食感のタイプ

さつまいもには様々な品種があり、大きく分けるとねっとり系ホクホク系、そしてその中間タイプが存在します。それぞれの特徴を知ることで、より美味しくさつまいもを楽しむことができるでしょう。

ねっとり系とホクホク系の中間タイプ

紅アズマ:蒸し芋で引き立つ、上品な甘さと栗のような食感

一昔前までは、さつまいもの代表的な品種として広く親しまれてきた紅アズマ。近年は、後述する紅はるかの人気に押され気味ですが、その美味しさは決して衰えていません。紅アズマの食感は、一般的にホクホクとねっとりの中間、あるいはややホクホク寄りと表現されることが多いようです。

農家である私の経験から言わせていただくと、紅アズマは断然蒸して食べるのがおすすめです。
さらに、蒸したて熱々をすぐに食べるのではなく、一日ほど置いて冷ましてからいただくと、味が落ち着き、より一層美味しくなります。

私が実際に一日寝かせた紅アズマを蒸して食べると、口の中に広がるのは、上品な自然の甘さと、まるで栗のようなほっくりとした食感。
焼き芋にしてもホクホクとして美味しいのですが、お客様の声や自身の経験を踏まえると、蒸すことで紅アズマ本来の甘さと風味が際立つように感じます。
もし、紅アズマを焼き芋にして「ちょっと物足りないな?」と感じた方は、ぜひ一度蒸して、少し時間を置いてから試してみてください。
きっと、その美味しさに驚くはずです。

紅はるか:焼き芋でとろける蜜のような甘さと、しっとりとした食感

近年、スーパーなどで見かける機会が非常に増えた人気の品種、紅はるか。
干し芋にすると、そのしっとりとした食感と濃厚な甘さが際立ち、 干し芋の定番となっています。

紅はるかは、蒸して食べるよりも、じっくりと時間をかけて焼き芋にするのが断然おすすめです。
紅はるかは、もともと水分を多く含む品種のため、蒸してしまうと水分が抜けきらず、ベチャベチャとした食感になってしまうことがあります。

しかし、焼き芋にすることで、余分な水分が抜け、熱によって糖度が凝縮され、まるで蜜のように甘く、とろけるような食感に変化します。食べた瞬間に口いっぱいに広がる、濃厚な甘さはまさに至福の味わいです。紅はるかのポテンシャルを最大限に引き出すには、ぜひ焼き芋でじっくりと時間をかけて調理してみてください。

ホクホク系

鳴門金時(高系十四号):ホクホク食感と上品な甘さ、冷まして食べると栗のような風味

鮮やかな黄金色の見た目が美しい鳴門金時は、高系十四号という品種を改良して生まれた、代表的なホクホク系のさつまいもです。
ホクホクとした食感の焼き芋が好きな方には、特におすすめの品種と言えるでしょう。

しかし、実はこの鳴門金時も、紅アズマと同様に、蒸して一日ほど置いてから食べることで、驚くほど風味が変化するのです。
蒸し加減にもよりますが、ホクホク感はそのままに、紅アズマ以上に栗のような、ほっくりとした食感と上品な甘さが引き立ちます。

冒頭でご紹介した「焼き芋にしたら微妙だった」というお客様が購入されたのが、まさにこの鳴門金時でした。
その後、「ぜひ一度蒸して試してみてください」とお伝えしたところ、「蒸した方が断然美味しかった!」という嬉しいご感想をいただきました。
ホクホク系のさつまいもも、調理法一つで全く違う顔を見せてくれる良い例と言えるでしょう。

しっとり系

シルクスイート、安納芋:じっくり焼き上げて、とろける甘さを堪能

近年人気の高いシルクスイートや安納芋は、その名の通り、しっとりとした滑らかな舌触りと、強い甘みが特徴のさつまいもです。
シルクスイートは、人によってはねっとり系とホクホク系の中間と捉える方もいますが、私が実際に食べている感覚としては、しっとり系に分類するのが適切だと感じています。

これらのしっとり系のさつまいもは、やはり焼き芋でいただくのが一番美味しいと感じます。
特に、弱火でじっくりと時間をかけて焼き上げることで、蜜がたっぷりと溢れ出し、とろけるような食感と濃厚な甘さを堪能することができます。
時間をかけて丁寧に焼き上げたシルクスイートや安納芋は、まさに至福の味です。

番外編

パープルスイートロード:鮮やかな紫色の個性派、スイーツやコロッケにも最適

鮮やかな紫色が目を引くパープルスイートロードは、アントシアニンを豊富に含んだ、健康にも嬉しいさつまいもです。
仙台ではあまり見かける機会が少ないため、一般的な特徴との比較は難しいのですが、一般的にはホクホク系のさつまいもとして知られています。

しかし、当園で栽培しているパープルスイートロードは、なぜか水分が多く、しっとりとした食感が特徴です。
この特性を活かして、スイートポテトなどのスイーツにすると、鮮やかな紫色が映え、風味も豊かに仕上がります。
また、コロッケの具材にすると、外はサクサク、中はほんのりしっとりとして、噛むほどに優しい甘さが広がります。
他のさつまいもとは一味違う楽しみ方ができるのが、パープルスイートロードの魅力です。

「なんだか違う?」と思ったら、調理法を変えてみよう!

いかがでしたでしょうか?
同じように見えるさつまいもでも、品種によって最適な調理法が異なることをご理解いただけたかと思います。
もし、「このさつまいも、なんだか美味しくないな…もしかしてハズレだったかな?」と感じたときは、諦めずに調理法を変えて試してみることをおすすめします。

今回ご紹介した内容は、あくまで私たちの経験に基づいたものですが、きっと皆さまのさつまいもライフをより豊かなものにするヒントになるはずです。
ぜひ、色々な品種のさつまいもを、それぞれの特性に合った調理法で味わってみてください。きっと、今まで以上にさつまいもの美味しさに感動するはずです。

秋の味覚、さつまいもを存分に楽しんでくださいね!

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