春の息吹と共に始まる、MITUの新たな挑戦2020:土と野菜への情熱

3月に入り、ようやく仙台にも春の陽気が訪れました。時折、日差しの暖かさに夏の気配を感じるほどです。
私たちMITUの畑でも、いよいよ4年目の作付け準備が本格的にスタートしました。今年はどのような野菜を、どのような想いで育てていくのか。私たちの考えを少しご紹介させてください。

MITUなりに考える「健康」:土、野菜、そして人へ

「自然栽培の野菜は健康に良い」「いや、従来の農法や有機栽培と変わらない」——。
そんな議論を耳にすることがありますが、私たちMITUも、様々な情報を調べ、深く考える中で、自分たちなりの「健康」を考えてきました。

正直なところ、自然栽培だから無条件に健康的であるとか、従来の農法だから全てが劣るといった単純な二元論には、少し疑問を感じています。
自然栽培であっても、虫食いだらけで生育の悪い野菜を見かけることもありますし、必要最低限の農薬などを使いながらも、しっかりと育ち、栄養価の高い(論文に基づいた意味で)野菜も存在します。

では、野菜が本当に健康に育つためには何が必要なのでしょうか?
私たちは、土の物理性(硬さ、水持ちの良さなど)、化学性(いわゆる栄養分)、そして微生物性の最適なバランスが重要だと考えています。
ふかふかで、バランスの取れた栄養があり、土の中の微生物が豊かに活動している——そんな土壌こそが、野菜にとって最高の生育環境なのではないでしょうか。

以前、ある有機農業の先駆者の方の講演会で、「自然栽培とか〇〇栽培という方法論に固執するのではなく、土を知り、作物を知り、それらが“健康な状態”を作り出すことこそが農家の技術である」というお話がありました。この言葉には、深く共感しました。

MITUの野菜を選んでくださるお客様の中には、ご自身や大切な方が体調を崩されたことをきっかけに、私たちの野菜を食べるようになったという方がいらっしゃいます。
そういった方々のことを想い続ける中で、私たちが辿り着いた答えは、「健康な土壌を育て、そこで力強く育った野菜をお届けする」ということでした。

そのため、仙台沿岸の圃場整備が行われた、決して状態が良いとは言えない畑を、様々な方法を試しながら「健康な」土へと変えていくことが、私たちの重要なミッションだと考えています。

前置きが長くなりましたが、今年の作付けに向けて、私たちが具体的にどのような方法を取り入れていくのか、詳しくご紹介していきます。

土壌分析の結果を羅針盤に:ピンポイントな肥料設計

昨年末、MITUでは新たな試みとして、土壌分析器を導入しました。
これまでも簡易的な分析器は使用していましたが、より精密に土の状態を把握したいという強い思いから、今回の導入に至りました。

実際に詳細な分析を行ってみると、「この成分が全く足りていない!」という驚きや、「この成分は意外と多かったのか!」といった新たな発見がありました。

これらの分析結果を基に、それぞれの畑で不足している養分をピンポイントで補給していく計画です。
私たちの圃場は全部で8箇所ありますが、同じような土に見えても、それぞれが全く異なる個性を持っていることに改めて驚かされました。例えば、多くの畑で鉄分やリン酸が不足している傾向が見られました。

信頼の有機肥料とアミノ酸肥料

土壌分析の結果を踏まえ、各畑の特性に合わせて不足している養分を補いつつ、例年使用している「郷の有機」とアミノ酸肥料も引き続き活用していきます。
さらに今年は、自分たちで作ったワラ堆肥を一部の畑で試してみる予定です。

「郷の有機」は、牛ふん、もみがら、海藻の残渣などを発酵させたもので、私たち自身もその効果を実感しており、信頼を置いています。
アミノ酸肥料は、魚の煮汁を凝縮し、米ぬかを配合したもので、こちらも作物の生育に良い影響を与えてくれると感じています。ただ、畑に撒くと猫が掘り返してしまうのが玉に瑕なのですが(笑)。

マルチと草生栽培の融合:それぞれの利点を最大限に

自然農園というと、「マルチは使わないんでしょう?」と尋ねられることがありますが、申し訳ありません。
私たちは、必要な場合には積極的にマルチを使用しています。ここでいう「必要な場合」とは、株周りの雑草対策に極力手間をかけたくない時、ネズミによる食害が懸念される場所、あるいは保温が必要な作物などです。
もちろん、使用する際も、必要最小限の量に留めるように心がけています。

時折、「草取りは障がいのある人にお願いすれば良いのでは?」という意見をいただくことがあります。しかし、私たちは草取り以外にも、彼らに活躍してほしい、より重要な仕事がたくさんあると考えています。
そうした他の仕事で能力を発揮してもらうことで、彼らの給料や工賃向上に繋がるのであれば、そちらの方がより良いと考えています。

マルチを張る一方で、畝の間など、野菜の生育に悪影響が出ない範囲で草を生やしています。
これには様々な理由がありますが、大まかに言うと、草を生やすことで畑の環境や土の状態を改善する効果を期待しているからです。
そのため、夏の畑は様々な種類の草が生い茂る、ある意味ワイルドな景観になります(笑)。

多様な品種への挑戦:固定種、在来種、そしてF1種

今年は、栽培する品目を少し絞り込み、その代わりに同じ品目でも異なる品種を積極的に植えてみようと考えています。その数、およそ40種類になる予定です。基本的には、在来種や固定種、自家採種した種を中心に据えつつ、F1種も一部取り入れています。

MITUの畑では、根菜類と果菜類がメインとなる予定です。葉物野菜は、残念ながら私たちの畑の土壌との相性があまり良くないため、ほどほどの栽培に留めます。
美味しい葉物野菜は、信頼できる近隣の「みのる農園」さんのものを楽しみに待つことにしています。

土の改善

土壌の状態をより良くするために、物理性の改善にも力を入れています。
具体的には、水はけの悪い場所を見つけては、ひたすら穴あけ器で穴を掘るという、地道な作業を続けています。
昨年も試みたのですが、深さ1メートルほどまで掘ると、過去の工事の際に踏み固められたと思われる硬い層(硬盤)が現れます。
根気強くその深さまで穴を掘ることで、その後の土壌の状態が大きく変わってくるのです。決して楽な作業ではありませんが、土壌改良のためには欠かせない工程だと考えています。

微生物との共存:未知なる可能性への探求

土壌の微生物性を高めていくことは、私たちにとって依然として難しい課題です。しかし、MITUでは、ヨーグルトなどから培養した乳酸菌や、納豆菌を増やして堆肥や土に施すといった試みを行っています。
また、野菜の生育状態を見ながら、葉面散布も実施しています。

微生物が豊かに活動する土壌にするためには、彼らの餌となる有機物を豊富に供給し、住みやすい環境を整えることが重要だと考えています。
そのため、畑に積極的に有機物を投入したり、できる限り植物を生やしておくといった、基本的な対策を継続していくしかありません。

この分野に関しては、まだまだ勉強不足を痛感しています。これからも積極的に学びを深めていきたいと考えています。

結び:土と歩む、喜びの季節

いかがでしたでしょうか?これから、私たちの畑は生命力に満ち溢れ、賑やかな季節を迎えます。土と向き合い、野菜を育てる私たち自身が、その成長を誰よりも楽しみにしているのかもしれません。今年も、皆様に美味しいと笑顔をお届けできるよう、土と共に歩んでいきたいと思います。

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