昨日の新聞で仙台市若林区の集団移転跡地利活用事業者が決まり、これで集団移転跡地の全エリアで事業者が決まったと報道されました。
1回目の事業者が決定してから約5年位でしょうか。
これから沿岸部全体のスタートという気持ちです。
今回は当園の集団移転跡地での畑作の課題について話そうと思います。
Table of Contents
土作りってそんなにかかるんですか?
集団移転跡地で畑をしていると、「こりゃ畑にするのにものすごい時間がかかるぞ」と常々感じています。
周りで同じように集団移転跡地を畑として活用している方の話でも同じような話題になります。
私自身の個人的な見解だと、家庭菜園レベルになるのに4〜5年、営農レベルの品質と収量を得られるようになるのには10年くらいかかるのではないかと考えています。
これは以前、別のブログ(https://sizennouenmitu.com/archives/2612)でほ場整備事業が行われた畑の土作りについて取り上げたことがありますが、そのほ場整備事業が行われた畑よりも時間がかかると推測しています。
この話をすると、「え?土作りってそんなにかかるんですか?堆肥とか肥料入れれば、すぐに野菜収穫できるんじゃないんですか?」とよく聴かれます。
集団移転跡地を借り受ける当初、私自身も土作りを3〜5年行ってそのあとは野菜がある程度収穫できるようになるはず、と甘い考えを抱いていました。
実際は「そんなことない」ありませんでした(笑)。
家庭菜園と営農の違い
ここで簡単に家庭菜園レベルと営農の違いを簡単に述べておこうと思います。
違いはシンプルに、一定の収量を一定の品質で安定的に提供できることが出来るか否かという違いだと考えています。もちろん、近年続いている異常気象でそれが難しい年、地域もありますが、それはいったん置いておきます。
これを提供できるのが「営農」レベル。
提供できないのが「家庭菜園」レベル。
この観点から行くと、仙台沿岸では、
場整備された圃場は、家庭菜園レベルから営農レベルに少しずつ移行してきた感じ
集団移転跡地は、家庭菜園レベルになりつつある畑が出て来始めたという感じ
です。
普通の畑でも、、、
篤農家と言われている超ベテランな方々や私がお世話になっている師匠の言葉を借りると、それまで畑として使用してきたところでも土作りが間違っていれば収穫量や品質は一定になりにくいし安定供給もしづらくなるようです。
普通に畑として使われていたところでも正しい土作りをしようとした場合には3年くらいで変化が現れ始め、5年くらいで状態が良くなり、10年で次のステージに行く、といった感じで長い年月をかけて変化していきます。
こう考えると、集団移転跡地を「畑」として良くしていくためにはものすごい時間がかかることがわかります。
何でもかんでも入れればいいわけでは、、
こういった話をすると、「堆肥をたくさんいれればいいじゃないですか?」とか「化学肥料を、、」とか「うちの新しく開発した土壌改良材を使えば、、」といったお話をいただくことがあります。
私自身もいろいろと試したのですが、集団移転跡地のような畑に堆肥をたくさん入れたり、化学肥料を使用し、野菜を育てることはある程度は可能です。ただ異常気象にとても弱く、収穫量も品質も安定しないことを身をもって知りました。
何でもかんでも堆肥や資材をたくさん入れればすぐに問題解決!というわけではなく、やはり時間をかけて良くしていくしかないと考えています。
土を改良していくためには
具体的に土を良くしていく方法は企業秘密です(笑)。
が、基本的なところでいくと、
土の物理性(硬さ、保水性、通気性など)
土の化学性(土の中の栄養分)
土の微生物性
の3つの観点から土作りを考えていきます。
土壌分析をしつつ、その場所その場所で土の特徴も微妙に異なるのでそういった微妙な違いから対策を考えてみたりもしています。
最後に
仙台沿岸は他の地域の農家さんから見ると「かなりハードな立地」、「もっと他の地域で農業したほうが生計立てやすいのではないか」と思われることも多いです。
私自身もそう思っています。
ただ自分の生まれ故郷という執着もあり、また人生の中で「0から土作り」をする機会というのはめったに経験できることでもないので、楽しみながらやっています。