時折、お客さんや知人、通りすがりの方々に「自然栽培って何?」「ほったらかしで野菜を育てるのとは違うの?」と聞かれることがあります。
みなさん、自然栽培というとどういうイメージをお持ちでしょうか?
このブログでは、自然農法とはどんな農法なのかについて見ていこうと思います。
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自然農法とは?
自然農法とは、「極力肥料や農薬を使わずに栽培する試みも含めて、植物本来の力を最大限に引き出す農法を突き詰めて行くこと」である。
これは、以前、公益財団法人自然農法国際研究開発センターの研究員の方が述べていたものなのですが、この定義が私は一番しっくりくると考えています。
一言に自然農法といっても、提唱者が違えば育て方も解釈の仕方も異なるため、定義するのが難しいのだそうです。
なお、自然農法を目指している人も「自然栽培」の部類に入ることになります。「自然農法転換中」という位置づけです。
ほったらかし農法、肥料も何も与えずに育てる農法、草を抜かずに生かす農法、、、、時折、宗教的なものと勘違いされることもあります。
確かに、かつての自然栽培実践者の先輩方の中には、神とか宇宙の力と表現している方もいました。
自然栽培にも派閥があり、◯◯式とか〇〇流自然栽培と呼ばれているものが多くあります。
それぞれで栽培方法が若干異なっていたり、考え方もまちまちです。また自然栽培という表現ではなく、別の言い回しとなっていることもあります。
その中で、共通しているように感じるのは「(化学農薬を使わず)植物本来の力を最大限引き出す農法」という部分でした。
どんな自然栽培があるの?
自然栽培にはどんなものがあるのかを見ていきます。
本当に様々な考え方や取り組み方があるのでここではざっくりとまとめてみたいと思います。
無施肥、無農薬、不耕起、不除草
これが一時期、「自然栽培」のテッパンかと感じるほど、考えが浸透していました。
自然そのままに育てるという方式です。
かの有名な福岡正信氏の自然農法の類がこちらのやり方になります。
実際のところ、この農法は条件がかなり恵まれていないと難しい農法だと考えています。
私の周りでも一時期、この農法で取り組む人が多くいました。
が、3〜5年くらいで多くの方が辞めていきました。
この農法の難しいところは自然環境が恵まれていないと農作物の収穫までたどり着けない、収穫量が低いという点です。
畑の養分を吸い続け、補給しなければ土がどんどん痩せていきます。
その痩せた状態になるのが営農開始から概ね3〜5年後であると考えられることからその時期にやめていく人が多かったと考えられます。
無肥料、無農薬、一部不耕起
「無施肥、無農薬、不耕起、不除草」は堆肥や肥料を一切入れないという考え方でしたが、このやり方では植物由来の堆肥であればOKという考え方です。これには一部、緑肥も含まれています。また、全ての野菜を不耕起で育てるのは難しいので、根菜類は耕起しても良いということになっています。
除草については除草しないことを勧めているものもあれば、野菜の生育を阻害する可能性がある場合は除草することを勧めるというものまで幅広い考え方です。
なお、不耕起については環境的な配慮から必要と考えている人も多いのですが、科学的な見解では不耕起で農作物を育てると生育や収穫量が下がるという報告もあり、今後この生育や収穫量をどう確保していくかが課題になっています。
無肥料、自然由来の農薬、(一部)耕起
肥料に関しては、植物由来のものは使用OKという考え方です。一部の本では、動物性の堆肥もOKというのもあります。
また、この方法では自然由来のものであれば忌避剤として農薬の使用を可能としています。
(農水省では例え自然由来のもので安全性が明らかなものを特定農薬と位置づけています。詳細はこちら⇒https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/about_tokutei.html)
例えば、重曹や食酢がこれにあたります。
また、牛乳や焼酎、唐辛子、わさびといった食品を使ったものを推奨している人もいますが、これらは科学的に忌避効果や安全性が確かめられていないものになっています。
耕起は一部あるいは全面OKとしています。
化学肥料以外の堆肥・肥料、無化学農薬
化学肥料以外の堆肥・肥料であれば使用OKです。ただし植物由来か動物由来かでランク付けが変わります。
農薬は化学的に合成されたものでなければ、基本OK。
耕起の可否は問われません。
とざっくり大まかにまとめただけでも4つ程度になります。
細々としたのを含めると、さらに細かく細分化していきます。
こう見ていくと、栽培方法1つとってもかなり幅広いことがわかりますね。
各々の理念やビジョン、思い、志が違うことが関係しています。
MITUは自然栽培してるのか?
当園では、MITU設立前〜2019年頃までは自然栽培メインでした。
今は、作物や畑、天候に合わせて柔軟なやり方で栽培しています(自然栽培〜減農薬)
何故、当園では自然栽培を始めたのか?
そのきっかけは園主の探究心からでした。
農業に興味を持ち始めた頃、化学肥料や化学農薬をガンガン使って栽培するのが 当たり前でそれらを使わずに野菜を作るのはありえない!と言われるくらいでした。
当時から少しひねくれていた私。
そう言われてしまっては、化学肥料や化学農薬を使わずに栽培したくなってしまいます。
また幼い頃から農薬に興味を持っていたこともきっかけになりました。
農薬に興味をもったのは、住んでいた地域の環境の変化があったから。
本当に小さい頃は、夏になるとホタルが飛び交い、畑には多様の生物が住み、眺めているだけでも楽しい田舎生活を送っていました。
それが物心つく頃にはだんだんホタルを見る機会も減り、畑も静かになっていきました。
そのことを祖母に聴きました。
「なんでホタルとかいなくなったの?」と。
すると、「農薬使って、みんないなくなったのよ」と教えてくれました。
当時はなんで農薬を使わないといけなかったのか、何故生き物を殺す必要があったのか、それが不思議でなりませんでした。
思い立つとすぐに行動するタイプなので、ちょっと大きな家庭菜園レベルで 化学肥料や農薬を使わずにあれこれと野菜を作り始めました。
するとこれがまた面白かったのです。
事細かに野菜の生育を観察したり、どうすれば肥料や農薬を使わずに作れるか調査と実験を繰り返したり。
いろんな生き物が畑にいて、いろんな草が生えている。
それを一つ一つ分かる範囲で調べました。
この虫はどんな虫なんだろ?野菜にはあまり良くないのかな?!
この草が生えているということは、土が肥えてるって祖母が言ってたっけ。
とか。
自分なりに突き詰めていくと、堆肥や肥料などをごく少量の投入に抑えて、緑肥を併用する農法が自分には合っていました。
その中で、自分がいいなと思ったのが、野菜「くさい」野菜。
例えば、人参くさくて味の濃いもの、春菊ならあの独特の苦味が強いもの。
そういう野菜を体が求めていましたし、それならばくばくと食べることができました。
結局は自分の好き好みや興味でやっているのか?と突っ込まれそうですが、私にとっては農業は仕事ではなく、生き方。
その生き方を突き詰めていきたかったんです。
どんな農法をしていたか?
当園では、
1)基本的に、草生栽培(雑草やソルゴー、豆類をそのまま畑にすき込む)+堆肥(牛や馬、鶏の堆肥)、ミネラル資材を各野菜に合わせて量を調節しながら散布。
ただし、震災後の圃場整備で草さえ生えない畑には一部化成肥料も使用し、0から植物が育つ土へと改良を続けています。
2)基本的に、無農薬。
⇒2022年時点では、作物の生育状況に応じて必要最小限の農薬を使用しています。
3)畑は耕起。マルチなどの資材は適宜使用。
4)除草:「上農は草を見ずして草を取る、中農は草を見て草を取る、下農は草を見ても草を取らず」という考え方で草は取るようにしています。
農業を始めてから2022年で9年目になりました。
就農当初は自然栽培メインで栽培していましたが、今は自然栽培〜減農薬栽培の方法をとっています。
農園の考え方として、「植物本来の力を最大限引き出し、健康な野菜を育てる。その健康に育った野菜を食べることがヒトの健康に繋がる」と考えているからです。
近年続いている異常気象などを考えると、植物本来のチカラを引き出すために植物が育つための快適な環境を整えることが大切だと思っています。
最後に
いかがでしたか?自然農法にも色々なやり方や考え方がありますが、その根底には「植物本来の力を最大限引き出し、健康な野菜を育てる」ことがあるということがわかりました。
これから自然農法で農業を始めようと考えている方、家庭菜園で自然農法にチャレンジしようと考えている方の参考になれば幸いです。