自然農法の野菜は腐らない、は本当か?

あなたはどんな野菜がいい野菜だと思いますか?

もしあなたが野菜にこだわりをもっていたのなら、

腐らない野菜が安全安心の証拠!とか本物の野菜は腐らない!という言葉を

聴いたことがあるでしょうか?

 

私たちも自然農園という屋号で農業をしていると、

「自然栽培の野菜って腐らないんでしょ?」と聴かれることがあります。

 

自然栽培ブームが訪れた頃にインターネット上でもたびたび見かけた「腐敗試験」が

きっかけで自然栽培の野菜=腐らないというイメージを持つ方が増えたような印象を持ちます。

 

このブログでは、自然栽培の野菜は腐らない、は本当なのか?を見ていきたいと思います。

 

 

枯れると腐れるの違いは?

 

広辞苑および日本国語大辞典によれば、

 

腐敗とは「有機物、特にタンパク質が細菌によって分解され、有毒な物質と悪臭ある気体を生じる変化」

 

枯れるとは「植物が水気がなくなって正気がなくなる。または花や葉が落ちる」

 

ということを意味します。

 

 

自然栽培の野菜=腐らない、はいつから言われ始めた?

 

自然栽培の野菜は腐らない、という話は、自然農法系の団体では40年以上前から

保存試験(腐敗試験)を行われていたことから言われ始めたと考えられています。

某自然農法団体では、教祖と呼ばれる方が腐敗実験(保存実験)を行い、

一般の野菜に比べて自然栽培で育てた野菜のほうが腐りにくいということを述べていたそうです。

 

近年では、木村秋則氏の「奇跡のりんご」がブームとなった頃に、

ナチュラルハーモニーの河村氏が『自然の野菜は腐らない』という本を出版し、

自然栽培の野菜=腐りにくい=安全安心の野菜というイメージが多く聞かれるようになったと考えられます。

 

実際に私たちが自然農園という屋号で農業をしているとよく

「自然栽培の野菜は腐らないから安全安心なのよね」とお話しいただくことが多く、驚きます。

 

 

何故、腐りやすいor腐りにくいのか?

 

野菜の腐りやすさ、あるいは腐りにくさを考えたときにまず出てくるのは

「一般(慣行)栽培の野菜は化学肥料をたくさん使っていて、

硝酸態窒素をたくさん与えているから腐れやすいんだ」という話です。

 

食べ物の腐敗をもたらすのは微生物で、動植物の生息する環境ではどこにでもいる微生物です。

農産物の場合は、田畑の土壌微生物が食べ物を腐らせる原因の1つになります。

腐敗するメカニズムとしては、腐敗をもたらす菌に対して植物自体が

抵抗できなくなったときから腐敗が始まると言われています。

 

有機農業の研究者によれば、化学肥料や有機質肥料を大量に使用し硝酸態窒素を溜め込んでいる植物は、

急速に生長して細胞壁が薄くなるために病害虫にかかりやすくなったり、

菌に対抗できず菌が増殖してしまい、腐りやすくなると考えられるそうです。

一方、適度な肥料を与え育った野菜は、細胞壁が厚く、菌に抵抗する力があることから

腐りにくいと考えられます。

 

 

植物はいずれ腐る

 

これは農業や家庭菜園をしている方なら普段目にすることかと思います。

植物はいずれ腐ります。

自然農法の野菜であろうと一般的な野菜であろうと、農産物であろうと

森や野原に自生している植物であろうと。

最後には腐れるのです。

 

森では草木は腐っていないではないかと言われそうですが、

例えば落ち葉の堆積しているところを掘ってみると下の方は湿って腐れています(=分解されています)。

 

 

自然栽培の野菜=腐れない、ではなく腐敗するスピードの問題

 

動植物は最終的には腐れ(分解され)ます。

自然栽培の野菜=腐れない、と言われるのは、先に植物が枯れ(水分が飛んでしまう)、

その後腐敗するために時間がかかるからだと推測されます。

一般的な栽培の野菜や有機質肥料を大量に使った野菜は菌に対抗する力が弱いため、

枯れる前に腐ってしまう可能性が高いと考えられます。

 

実は、河村氏の『自然の野菜は腐らない』という本を読み進めていくと、

ところどころで自然栽培の野菜は「腐りにくい」「腐りにくい傾向がある」という記述があります。 

また、きゅうりの腐敗実験を取り上げており、そこで自然栽培のきゅうりは 

「悪臭ではなく、かすかに甘い匂い」がすると述べています。 

つまり、自然栽培のきゅうりも腐敗が始まっていたのだと推測されますが、 

その後の経過観察は本には記載されていませんでした。 

これらのことから題名の「腐らない」は誤認を与えている可能性もあります。 

 

いかがでしたか?

生態系から考えてみた場合、自然界には生産者(自分で有機物を生産するもの)と 

消費者(有機物を食べるもの)、そして分解者(有機物を分解して無機物にするもの)がいます。 

腐敗は分解者が有機物を分解して無機物にする自然のサイクルであると考えることが出来ます。

 

自然栽培で育てた野菜は腐らないのではなく、腐るまでに時間がかかると考えるほうが良いかもしれません。 

腐りにくくするために保存料などを使っているものもあるので一概に腐るまでに 

時間がかかる野菜が安全!とは言えません。 

しっかりと生産者を知り、育て方を知り、信頼できるものを選んでみてくださいね。

関連記事

  1. 野菜とミネラルのお話-鉄

  2. F1種子って何?危ないの?

  3. 硝酸態窒素って危ないの?

  4. 有機栽培と自然栽培の違いって何?選ぶ時はどうすればいいの?

  5. 野菜を洗剤で洗うと何が違う?

  6. カロテノイドって何?!-②