自然農法と自然栽培、その違いとは?〜現場の声から紐解く〜

「テレビでたまに見かけるけど、自然農法とか自然栽培ってどうなのよ?」

近年、健康志向の高まりとともに、「自然農法」や「自然栽培」という言葉を耳にする機会が増えたように感じます。自然農園(*2019年時点)を営んでいると、お客様から「自然栽培と自然農法ってどう違うんですか?」と尋ねられることも少なくありません。私たち自身は、特定の農法や栽培方法に固執しているわけではありませんが、これらの言葉が持つ意味合いや、それに関わる人々の考えには深い関心があります。

今回のブログでは、自然農法や自然栽培の現場で活躍されている生産者の方々や、関連するメーカー、団体の皆様から伺ったお話を基に、最近の自然栽培・自然農法事情を掘り下げていきたいと思います。

自然栽培と自然農法の違いとは?

書店には「自然栽培」と銘打たれた書籍もあれば、「自然農法」「自然農」、さらには「〇〇式自然農法」といった多様な表現が見られます。これらの違いは一体何なのでしょうか?

様々な文献を読み解くと、それぞれの提唱者によって栽培や方法に対する考え方に微妙な差異があり、それが表現のニュアンスの違いに繋がっていると推測されます。

実際に自然農法や自然栽培に取り組む生産者や団体の方々のお話を聞いていると、一般的には以下のように区別されることが多いようです。

  • 自然農法: 化学農薬や化学肥料を使用せず、自然の力を活用して農産物を育てること、あるいはその方法を目指すこと。
  • 自然栽培: 化学農薬や化学肥料を一切使用せず、畑の中の自然な循環だけで農産物を育てること。

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、生産者によって具体的な取り組み方や解釈は異なるため、明確に線を引くことは難しいのが現状です。

最近の自然栽培事情

かつての自然栽培は、「畑の外から植物の栄養となるものを一切持ち込まず、畑の中の自然サイクルだけで作物を育てる」という考え方が主流だったと言われています。しかし、最近ではこの状況に少しずつ変化が見られるという話を、複数の生産者やメーカーの方から伺いました。

その背景には、純粋な自然栽培だけでは十分な収穫量を得ることが難しく、生活が困窮してしまうという現実があります。特に、2000年頃の自然栽培ブームをきっかけにこの農法を始めた方々の中には、他の栽培方法に転換するケースが増えているようです。

これはあくまで私個人の考えですが、「畑に一切何も持ち込まずに農産物を作る」というのは、非常に困難なことではないかと感じています。水田で栽培される稲は、川水や雨水を通じてある程度の栄養を補給できると考えられますが、畑の場合、基本的には雨とそこに生える草のみが栄養源となります。人が収穫を行う以上、畑の栄養分は徐々に失われていくのは自然な流れではないでしょうか。

もちろん、周囲が豊かな森に囲まれており、落ち葉や養分を含んだ水が流れ込みやすいといった恵まれた環境の畑であれば、自然栽培は可能かもしれません。しかし、そのような理想的な環境は、山間部の広葉樹林帯などに限られると考えられます。

このような自然栽培の難しさから、より現実的なアプローチである自然農法へと移行する生産者も増えてきたと言います。自然農法では、土壌改良という名目で有機肥料を施したり、堆肥を利用したりすることで、自然栽培に比べて収量が安定する傾向があるようです。

肥料か土壌改良材か

自然農法では、堆肥やアミノ酸肥料、魚由来の肥料などが利用されることも少なくありませんが、一般的な慣行栽培の生産者とは異なる解釈がなされることがあります。それは、これらの資材を直接的に作物を育てるための「肥料」として捉えるのではなく、土壌微生物のエサとなり、土壌環境を改善するための「土壌改良材」として捉えるという考え方です。

したがって、そのような主張をする生産者の方々からすれば、堆肥やアミノ酸系の肥料は「肥料」ではなく、あくまで「土壌改良材」であるという認識になります。

しかし、一般的には、「肥料」は肥料取締法に基づいて登録されたものであり、それを畑に投入した時点で「肥料を入れた」と見なされます。この点に関しては、関係者の間でも解釈が分かれることが多いようです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。自然農法や自然栽培については、現在でも様々な議論や解釈が存在し、生産者の考え方や所属する団体によってもその捉え方は異なります。

しかし、近年では、特定の農法に固執することなく、植物生理学や土壌学といった科学的な視点を取り入れ、美味しい野菜や生産者自身が安心できる栽培方法を追求する若い世代の生産者が増えてきています。その結果、自然農法、有機農法、一般農法といった従来の枠組みが曖昧になりつつあるような印象を受けています。

私たちMITUも、特定の栽培方法にこだわることなく、健康な土壌で健康な野菜を育てることを基本としています。そして、その健康な野菜を食卓へお届けすることで、皆様の健康に貢献したいと考えています。

その目的を達成するために、私たちは土壌や畑の環境を注意深く観察し、必要に応じて堆肥や有機質肥料(魚由来のアミノ酸肥料)、ミネラル肥料などを適切に使用しています。

ぜひ、こだわりの野菜を選ぶ際には、「〇〇農法」や「△△式栽培」といった名称だけでなく、生産者がどのような考え方で、どのように野菜を育てているのかを直接聞いてみることをお勧めします。そうすることで、きっと自分に合った、安心できる野菜を見つけることができるはずです。

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