新しい時代の息吹を感じながら、土と汗と笑顔が織りなす農福連携の現場から

暦は4月を迎え、新たな年号の発表という時代の節目に、私たちは未来への希望を膨らませています。ここ、MITUの畑では、来るべき種まきの季節に向けて、着々と準備が進んでいます。
そして、この活気あふれる現場には、いつも力強い味方である就労支援のスタッフさんたち(以下、親しみを込めて「仲間たち」と呼ばせてください)の笑顔と活力が溢れています。

今日は、そんな私たちMITUの農福連携の現場から、今まさに繰り広げられている作業の様子を、皆さんに少しだけお伝えしたいと思います。

仙台の春の息吹を感じながら

仙台の沿岸地域は、春になると雨が少なく、代わりに強い風が吹き抜ける日が多いのが特徴です。そのため、農作業は天候とのにらめっこ。毎日、空模様や風の強さを確認しながら、臨機応変に作業計画を立てています。

春の植え付け前の一大作業といえば、堆肥や土壌改良材といった資材を畑に撒くこと。そして、作物の種類によっては、マルチと呼ばれる黒いビニールシートを畝に張る作業も欠かせません。
堆肥の散布には、便利な機械もあるのですが、私たちの畑では、現在も人力での作業が中心です。もちろん、畑の面積が広がるにつれて、機械の導入も検討していくことになるでしょう。未来へのちょっとした妄想も、また楽しいひとときです。

さて、2019年MITUで使用する堆肥の量は、なんと約10トン!古川の圃場では、近隣の方にお願いして散布していただいていますが、ここ仙台の畑では、約8トンもの堆肥を仲間たちと力を合わせて人力で撒いています。
私たちが使用している堆肥は、海藻やカニ殻などが豊富に含まれているため、どちらかというとサラサラとした質感。そのため、少しでも風が吹くと飛んでしまいやすいという特性があります。だからこそ、風の弱い日を選んで、慎重に作業を進めているのです。

心強い仲間たちの存在

普段、この堆肥撒きの作業は、私と鈴木の二人で行うことが多く、正直なところ、息を切らしながらの重労働です。そんな中、施設外就労で仲間たちが来てくれる日は、まさに救世主が現れたかのよう!

みんなで一輪車や二輪車、そして軽トラックを駆使して、畑に堆肥を運び、散布していくのです。フレコンと呼ばれる大きな袋に入った堆肥を、スコップで一輪車などに移し替え、それを運び、散布場所に広げていく。この一連の作業を、みんなで力を合わせて繰り返します。
もちろん、堆肥を均一に撒いたり、微妙な量の加減を調整したりといった、より繊細な作業は、私たちMITUのメンバーが最終的に行います。
仲間たちも、支援員の皆さんも、一日作業が終わる頃にはヘトヘトになっているはずですが、それでも「なまった身体にはいい運動になる!」と、笑顔で話してくれるのが、本当にありがたいです。

それぞれの得意を活かして

力仕事である堆肥撒きは、ある程度体力のある仲間や、足腰が比較的丈夫な仲間にお願いしています。しかし、私たちの仲間の中には、女性で力仕事が苦手な方もいらっしゃいます。そういった方には、別の場所で大豆や小豆の選別作業をお願いしています。
写真はその選別の様子です。白大豆と黒大豆が混ざってしまったものを、一粒一粒丁寧に分け、さらに、欠けていたり、形の悪い豆を取り除いていきます。

この選別作業を担当してくれている仲間は、最初はとても丁寧に作業をするあまり、時間がかかってしまうこともありました。しかし、慣れてくると、一人でどんどん選別を進めていくようになったのです。その集中力は本当に素晴らしく、休憩の声をかけるまで、黙々と作業に没頭しています。
ご本人も、堆肥撒きよりも、この大豆の選別作業の方が好きだと話してくれました。自分の得意なこと、集中できることを見つけ、それを活かせる場所があることは、働く喜びにつながるのだと改めて感じます。

適材適所で輝く個性

以前、ある障害者就労支援の先駆者の方とお話する機会がありました。私が「働きたい意欲のある方の就労支援などのお手伝いをしたい」と話した際、その方は「そんな人はごく少数で、働きたいという障がい者は少ない。いかに働いて自立させるかが大事だ」と指摘されました。
働きたいという意欲のある人が世の中に多いのか少ないのか、私には断言できません。しかし、私がこれまで出会ってきた多くの仲間たちは、働くことに意欲を持ち、楽しさや生きがいを感じている人たちでした。

脳や神経の病気で障がいが残ってしまったけれど、社会とのつながりを求め、生きがいの場を持ちたいと願う人。「発達障害」と診断され、懸命に努力してきたけれど、なかなか社会に馴染めなかったという人。普段、人との交流が少なく、もっと誰かと関わりたいと思っている人。そういった方々との出会いが、私のこれまでの道のりにはたくさんありました。

もちろん、中には働く意欲がなかなか湧かないという仲間もいましたが、そういった方々の背景には、様々な課題が潜んでいると考えています。
だからこそ、私たちは、仲間たちが「やってみたい」と心惹かれること、得意なこと、そして何よりも「楽しい」と感じられる機会を、できる限り多く作っていきたいと思っています。そうすることで、それぞれの個性がキラキラと輝き出し、結果として、それぞれのペースで、それぞれの形で、社会とのつながりを築いていけるのではないかと信じています。

私自身、やりたいこと、自分が楽しいと感じることを仕事にしているので、「楽しい」とか「チャレンジ」といったキーワードには、人一倍強い興味があります。

働き方に対する考え方は十人十色。それでも、一日の作業を終え、仲間たちが「今日も一日、お疲れ様でした!」と笑顔で帰路につく姿を見送る時、私たちもまた、温かい気持ちで満たされるのです。

いかがでしたでしょうか?

農福連携という取り組みは、本当に様々な視点や切り口から考えることができる、奥深いテーマだと感じています。これからも、仲間たちとの日々の触れ合いを通して、その可能性を আরও深く探求していきたいと思っています。そして、このブログを通して、農福連携の現場のリアルな様子や、そこで生まれる喜びやチャレンジを、皆さんと共有していけたら幸いです。これからも、MITUの畑から、笑顔と活気に満ちた便りをお届けしていきますので、どうぞお楽しみに!

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