【科学的土壌分析で実現する、栄養満点野菜】MITUが挑む土作りと「農家のお医者さん」の活用

いつもMITUのブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。仙台で野菜を育てている佐藤です。

今回は、私たちが日々向き合っている「土壌分析」について、その重要性や、2020年から導入した土壌分析器を活用した新たな試みについて深く掘り下げていきたいと思います。

「土壌分析」と聞いても、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
MITUではこれまで、簡易的な分析や外部機関への依頼を行ってきましたが、より深く土壌の状態を理解し、美味しいだけでなく栄養価の高い野菜を育てるために、自社での分析を開始しました。

なぜ今、土壌分析が重要なのか? 経験と勘からの脱却

多くの農家さんは、種をまき、苗を植える前に、どの時期にどんな野菜を育てるかの年間計画を立てます。
その計画に基づき、堆肥や肥料、資材をどのくらい投入するのかを決めていくのが一般的な流れです。

しかし、この堆肥や肥料の量を決める際、いまだに長年の経験や勘に頼っている農家さんが少なくないのが現状です。
特に、経験豊富なベテラン農家さんにその傾向が見られるように感じます。

一方で、若手や新規就農者の方々は、土壌分析を積極的に取り入れている方が多く、私の周りでは専門の検査機関に分析を依頼しているケースが多く見られます。

野菜を育てる前に土壌分析を行う最大の理由は、畑に不足している栄養分や過剰な栄養分を事前に正確に把握し、畑全体の栄養バランスを最適な状態に調整する必要があるからです。

MITUの畑の中には、東日本大震災後に何度か工事が入った区画があり、そうした場所は養分がもともと少ないだけでなく、栄養バランスが大きく崩れている可能性がありました。
そのため、今回、より詳細な分析が可能な土壌分析器を新たに導入することを決意しました。

これまで使用していた簡易分析キットでは、本当に基本的な項目しか測定できませんでした。
新しい分析器は、より細かく、多岐にわたる栄養成分を数値として捉えることができるため、以前から「おそらく〇〇が足りないだろうな」と推測していたことが、実際に正確な数値として示され、具体的な改善策を講じる上で非常に役立っています。

美味しさと栄養価の両立へ:土作りへの新たな視点

2000年頃には、「有機野菜と慣行栽培野菜の栄養価に差はあるのか?」というテーマで、いくつかの研究論文が発表されました。
その多くは、有機野菜には抗酸化物質が多く含まれる傾向があるものの、その他の主要な栄養価においては統計的な差は見られない、という結論を出していました。

これらの論文を詳しく読み解くと、確かに「統計」上は有意な差がないとされていました。
しかし、個々の農家のデータを詳細に見ていくと、有機栽培農家であっても慣行栽培農家であっても、それぞれの農家単位で収穫された野菜の栄養価には大きなばらつきが存在していたのです。

栄養価が非常に高い野菜を育てている農家さんもいれば、残念ながらそうでない農家さんもいました。

この違いは一体何故だろう?と考えました。調査対象となった農家さんの栽培地域が異なり、天候や土壌の性質がそれぞれ異なっていた可能性も考えられます。
しかし、ある勉強会で、「農家間で野菜の栄養価に差が出るのは、土作り、特に土壌分析に基づいた緻密な管理の違いが大きい」という話を聞き、深く納得しました。

確かに、有機栽培を実践している農家さんの中にも、土壌分析をほとんど行わず、大量の堆肥を投入するだけで済ませているケースもあれば、一方で、定期的な土壌分析はもちろんのこと、土壌中の微生物の活性状態や土の物理的な側面(保水性、通気性など)を総合的に考慮しながら、丁寧に野菜を育てている農家さんもいます。
そう考えれば、収穫される野菜の栄養価にばらつきが出るのは当然のことと言えるでしょう。

恥ずかしながら、MITUでもこれまで、簡易的な土壌分析や、土壌の生き物や物理性に着目した土作りは行ってきましたが、野菜の生育に必要不可欠と考えられている全ての養分を、こまめに、そして正確に測定していたわけではありませんでした。

そこで、今回、高性能な土壌分析器を導入したことを機に、これまで以上に細やかに土壌の状態をモニタリングしながら野菜作りを行い、それが野菜の生育や味わいにどのような変化をもたらすのか、実験的な取り組みを開始することにしました。

栄養満点野菜への想い:「農家のお医者さん」が導く、理想の土壌

MITUは、ありがたいことにマルシェやイベントへの出店を続ける中で、本当に多くのお客様と直接お会いする機会に恵まれてきました。
その中で、最も多くのお客様から寄せられる声の一つが、「栄養満点の野菜を食べたい」「もっと健康になりたい」という切実な願いです。

偏った食事や生活習慣、日々のストレス、あるいは病気を経験されたことなど、様々なきっかけで食に対する意識が大きく変化していく中で、MITUの野菜に興味を持っていただく方もたくさんいらっしゃいます。

私たちMITUとして、お客様のそうした願いに応えるためにできることは何か? それは、お客様が心から望む、栄養満点の野菜を育てることだと確信しています。
そのために、私たちが導入した土壌分析器は、まさに畑の健康状態を診断する「農家のお医者さん」のような存在です。

「農家のお医者さん」とは?

今回MITUが導入した土壌分析器は、高度なセンサーと分析技術により、畑の土壌に含まれる様々な栄養素の量やバランス、pH(酸度)、EC(電気伝導度)などを、その場で迅速かつ正確に測定することができます。

従来の簡易分析では把握できなかった微量要素の過不足や、土壌の物理化学的な特性を詳細に分析することで、作物が最も良く育つ理想的な土壌状態を科学的に把握することが可能になります。

「農家のお医者さん」を活用するメリット

  1. リアルタイムな土壌診断: 採取した土壌サンプルをその場で分析できるため、迅速に土壌の状態を把握し、タイムリーな対策を講じることができます。
  2. 詳細な栄養成分の把握: 窒素、リン酸、カリウムといった主要な栄養素はもちろんのこと、カルシウム、マグネシウム、微量要素など、作物の生育に必要な様々な成分の含有量を正確に測定できます。
  3. pHとECの適正化: 作物ごとに最適なpHとECを把握し、必要に応じて改良材の投入や水管理を行うことで、根の生育を促進し、養分吸収率を高めます。
  4. 過剰な肥料投入の抑制: 土壌の状態を正確に把握することで、経験や勘に頼った過剰な肥料投入を防ぎ、肥料コストの削減と環境負荷の低減に繋がります。
  5. 病害虫リスクの低減: 健全な土壌で育った作物は、病害虫に対する抵抗力が高まります。土壌分析に基づいたバランスの取れた土作りは、病害虫に強い野菜を育てるための基礎となります。
  6. データに基づいた栽培管理: 過去の分析データと比較することで、土壌の変化を長期的にモニタリングし、より精密な栽培計画を立てることが可能になります。
  7. 収量と品質の向上: 理想的な土壌環境で育った野菜は、生育が促進され、収量の増加と品質の向上に繋がります。そして、何よりも栄養価の高い、美味しい野菜を育てることができます。

私たちMITUは、この「農家のお医者さん」である土壌分析器を活用することで、畑の健康状態を常に最適に保ち、お客様に安心してお召し上がりいただける、真に栄養満点で美味しい野菜を育てていきたいと考えています。

栄養コンテストへの挑戦と、未来への展望

今回の新たな試みとして、MITUでは、この土壌分析に基づき育てた野菜が収穫できた際には、有機農業団体が開催している栄養コンテストへの出品や、専門機関への栄養分析の依頼を積極的に検討しています。

自分たちの育てた野菜が、客観的なデータとしてどれほどの栄養価を持っているのかを正確に把握し、その結果を今後の栽培方法の改善に活かしていくことが、私たちの目指す「栄養満点野菜」の実現への重要な一歩だと考えています。

「せっかく野菜を食べるなら、美味しくて、そして何よりも栄養満点のものを。」

私たちも、日々そう願うお客様と同じ気持ちです。だからこそ、最新の科学技術である土壌分析をしっかりと行い、データに基づいた緻密な管理を徹底しながら、愛情を込めて野菜作りを続けていきます。

これからもMITUは、土壌の健康を第一に考え、お客様の健康な食卓に貢献できるような、安全で、そして栄養価の高い野菜をお届けできるよう、日々努力を重ねてまいります。今後のMITUの野菜作りに、ぜひご期待ください。

MITUの土作りにご期待ください!

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