宮城県仙台市で人参を栽培している農園MITUです。
2024年12月から続けてきた人参の収穫も、おかげさまで今週で無事に終わりを迎えそうです。大きな被害もなく、平穏なシーズンを終えられることに安堵しています。
さて、今回は私の農業人生における大きな転換点となった、師匠との出会いとそこからの変化についてお話したいと思います。
Facebookでは時折触れていましたが、改めてじっくりと語らせてください。
Table of Contents
1.異例の就農、 メンターの重要性を痛感
私は少し変わった形で農業の世界に足を踏み入れました。
前職はリハビリの仕事。農業の知識はもちろん、経営の経験も全くない状態からのスタートでした。まさに、未知の世界に飛び込んだようなものでした。
右も左も分からない私は、とにかく農業に関する本や論文を読み漁り、農業系の大学院にも通いました。熱心な先生方に教えを請い、週末には県北の祖母の家で野菜の育て方や産直への出荷方法などを教えてもらう日々。
これらの経験は本当に貴重な財産となりました。
しかし、今振り返ると、これから就農を目指す方には、就農前にメンターとなる存在を見つけ、農業経営に関する心構えを学ぶことを強くお勧めしたいです。
独学でのスタートは、時間も労力も必要以上に費やしてしまう可能性があります。
2.どん底で出会った一筋の光、師匠との劇的な出会い
農業を始めて数年後の2019年。台風による甚大な被害を受け、私の頭には「倒産」という二文字が現実味を帯びて迫ってきました。
「どうにかしなければ…!」絶望の淵に立ちながらも、資金調達と経営相談ができる人との出会いを必死に求めました。
実は、台風被害以前から経営は自転車操業状態で、将来への明るい兆しは見えていませんでした。
そんな時、SNSでの情報収集中に、今の師匠と出会ったのです。
現役の農家でありながら、農業経営コンサルタントとしても活躍されているという投稿に、藁にもすがる思いでDMを送りました。
思い切って連絡したところ、師匠は遠方から私の圃場まで足を運んでくださり、様々なアドバイスをくださいました。
当時は少量多品目有機栽培に取り組み、震災の被害を受けた土地で土壌の状態も決して良くありませんでした。
そんな状況で師匠の言葉一つ一つが、私の胸に深く突き刺さったのを今でも鮮明に覚えています(笑)。
師匠のアドバイスに憤慨する相談者も多かったそうですが、私にとっては全てが痛いほど事実だったため、グサッと抉られるような感覚でした。
師匠は言いました。「経営者には、すぐに経営が上向くタイプと、時間がかかるタイプがいる。あなたは後者だ」。
自分でもそう感じていた私は、数年かけてじっくりと経営を立て直そうと決意しました。幸いなことに、その後周りの方々の温かい支援もあり、資金調達もでき、なんとか営農を続けることができました。
3.経営改善の鍵、「選択と集中」という羅針盤
師匠からは、技術的な指導はもちろんのこと、農業経営に関する心構えを数多く学びました。
その中でも、今でも私の心に深く刻まれている言葉が「選択と集中」です。
多品目栽培ではなく、自分の土地に合った作物に絞り込み、栽培面積を適正化し、その作物に経営資源を集中することで、事業は着実に拡大していく。師匠のこの言葉は、当時の私にとってまさに目から鱗でした。
師匠と出会う前は、年間60種類から80種類もの作物を栽培し、毎日朝から晩まで様々な作業に追われていました。
しかし、師匠の教えに従い、少しずつ品目を減らしていきました。取引先との関係もあったため、すぐに数品目に絞ることは難しかったのですが、毎年着実に品目を整理していき、4年ほどの時間をかけて、ナス、人参、アスパラガスの3品目をメインとする栽培体系へと移行しました。
もちろん、品目を絞り込むことには不安もありました。「売り先を新たに確保できるだろうか」「災害が起きた時に収入が激減してしまうのではないか」。しかし、意外なことに、やってみると何とかなるものなのです(笑)。
一つ一つの作物に集中することで、作物のわずかな変化にも気づき、きめ細やかな対応ができるようになりました。また、時間的な余裕が生まれたことで、販路開拓や情報収集といった営業活動に時間を割けるようにもなりました。
少量多品目有機栽培の頃は、毎日休みなしで10時間以上働いていましたが、現在は結婚し、子どもも生まれ、家族との時間も大切にできるようになりました。そして、少量多品目栽培時代と比較すると、月商も数倍にまで成長しました(もちろん、当時の月商が少なすぎたという側面もありますが)。
異常気象による収量減など、まだまだ課題はありますが、私の農業経営は着実に上向きに進んでいます。
4.新規就農するあなたへ、師匠との出会いを大切に
これから新規就農を目指す方は、就農予定地の先進的な農業経営者や農業大学校での研修を検討されることが多いと思います。
その際、まずはいろいろな農園を実際に訪れてみることを強くお勧めします。
様々な農園を視察する中で、「この農家さんは上手くいっているな」「この経営者から学びたい」と感じる出会いがきっとあるはずです。
そうした成功している農業経営者と積極的に知り合い、その方を師匠とすることで、あなたの農業経営はよりスムーズに進む可能性が高まります。
就農という新たな挑戦を始めるにあたり、心から信頼できる師との出会い、そしてそこから得られる学びを大切にしてください。
私の師匠、参加している農業系オンラインスクールの主宰、尊敬する大先輩が新規就農者向けの本を執筆しました。
私が就農する頃に読みたかった一冊。
これから就農を考えている方は一読ください。
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