宮城県仙台市にある自然農園MITU。現在畑が広がるこの地域は、かつて東日本大震災による津波による甚大な被害を受けた地域です。
そんな何もかもが失われた場所で行われるのは、日本ではほとんど例を見ない「スイートソルガム」という甘味料の栽培で、2021年にはこの作物を加工したシロップの販売も予定されています。
園主である佐藤は、このスイートソルガムシロップを通して新しい形の震災復興そして社会貢献を目指しています。今回は、その「新しい形」について詳しくご紹介いたします。
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MITUの思い、佐藤代表の思い
自然農園MITUは「畑から元気を届ける」をコンセプトに「野菜や農園を通して”心”や“身体”を満たしたい」という想いで活動しています。
このコンセプトに至ったきっかけは二つあります。
①園主佐藤の交通事故
事故に遭い、働くことも日常生活を送ることも困難になったときに野菜作りと出会い、社会へ踏み出す一歩になりました。
②過去の言語聴覚士の経験
かつて言語聴覚士として働いていたとき、患者さんが病院や施設を退院したあとに行き場がなく、引きこもりになってしまう方々の現状を知りました。
そういった方々の何も出来ないという悶々とした気持ちと、園主佐藤自身が事故に遭い似たような経験をしたことが重なり、「農業を通して、障がいのある方の生きがいの場、就労の場をつくろう」と思い、新規就農しました。
ソルガムとの出会い
MITUがある宮城県仙台市宮城野区の、岡田地区という場所は海から約800mに位置し、東日本大震災で津波による大きな被害を受けた地域です。
岡田地域では3〜5mの高さの津波が押し寄せ、多くの建物が流され、地元住民の1/3の方が亡くなりました。震災後、生き残った地元住民の多くは地元を離れ、農業の担い手が減少しました。存続が危ぶまれましたが、徐々に若手の新規就農者が集いはじめたのです。
しかしながら、こうした明るい兆しがある一方で使用される農地の多くが復旧工事や整備工事による土の入れ替えが行われた直後で、なおかつ沿岸部では塩害などの被害もあったため、作物を育てることが困難な状況にありました。
ですが、そのような土の状態でも育つことができる作物がありました。
それがソルガムです。
ソルガムは、どんな土の状態でも成長することができ、且つ育てるだけでも土壌改良が期待できるという、この沿岸部にピッタリな作物でした。
また、園主佐藤の母校で、代表の指導を行っていた教授が、ソルガムの一種であるスイートソルガムの研究を行っていたこともあり、興味を持った佐藤代表はさっそくスイートソルガムの栽培に取り掛かりました。
▲東日本大震災の時の写真
ソルガムによる新しい社会貢献の形
前述したように、自然農園MITUは農業を通して、障がいのある方の生きがいの場、就労の場を作ることを目指して日々活動しています。しかしそれと同時に東日本大震災に被災した土地や農家の復興も行っていきたいとも考えています。
そこで、スイートソルガムという作物の茎を絞ってシロップをつくることを考えました。なぜスイートソルガムシロップを作ることになったのか、理由は大きく2つあります。
- 簡単に栽培・加工ができる。(障がい者)
- 栽培しながら塩害からの回復と収入獲得ができる。(農家)
スイートソルガムは、簡単な方法でシロップにすることができるので、障がいを持つ方でも加工作業に参加することが可能です。ですので、障害のある人の雇用の場を作ることができます。
そして、仙台沿岸部の農家の所得UPにも繋がります。
また、ソルガムシロップの加工作業やPRキャラクター「ソルソルくん」を使用した企画の展開といったものがあります。また、「仙台市集団移転跡地利活用事業」でMITUが取り組む新規事業を通して、地域での連携や協働なども含まれます。
これらは障がいを持つ方への雇用の創出や自立支援へとつながり、MITUが目指す「障がいのある方の生きがいの場、就労の場」を作ることができます。
こうした一連の活動を行っていくためには農業・農産物の流通・認知の拡大が大きく関係しており、農業と福祉の直接的ないし間接的なつながりは今後、さらに重視される観点であると予想されます。
まとめ
将来的には、MITUで来年販売予定のソルガムシロップを、仙台の他の農家さんを巻き込み、MITUだけのソルガムシロップではなく、仙台地域全体のソルガムシロップにしていきたいと考えています!
<参考文献>(最終参照日:2020年8月31日)
・東日本大震災による津波被災農地におけるソルガム品種の生育
中村 聡,, 齋藤 満保, 木村 和彦
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjcs/55/0/55_KJ00008426184/_article/-char/ja/