仙台沿岸では、例年通り12月下旬から厳しい寒さと乾燥した日々が続いています。冬から春にかけて雨が少ないこの地域では、時折降る雨や雪が、土壌を潤し、私たち農家にとっては恵みの雨となります。
宮城県内では、ネギやブロッコリー農家さんや施設園芸に取り組む方々を除き、多くの農家が冬の間は農作業が一段落する閑散期を迎えます。厳しい寒さの中、ビニールハウスなどの施設や保温資材を使わない露地栽培では、野菜の生育は非常に困難です。
そんな冬の時期に、私たちはよく尋ねられます。「障害のある方たちは作業に来ているのですか?農福連携だと、冬の間は作業がなくて難しいのではないでしょうか?一体どのように過ごしているのですか?」と。
私たちの農場、MITUでは、よほどの悪天候(長雨、台風、大雪など)に見舞われない限り、障害のあるスタッフの皆さんと一緒に農作業を行っています。
このブログでは、冬から春先にかけて、障害のあるスタッフの皆さんとどのような作業に取り組んでいるのかを少しだけご紹介したいと思います。これから農福連携を始めようと検討されている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
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MITUにおける冬から春先の作業内容
MITUでは、冬から春先にかけて、主に以下の作業を行っています。
- 葉物野菜・根菜類(白菜、カブ、大根、人参など)の収穫
- 小豆や大豆の脱穀・選別
- 干し野菜づくり
- 圃場の片付け
- 春に向けた作付け準備
これらの作業のうち、干し野菜づくりを除くほとんどの作業を、スタッフの皆さんと一緒に行ったり、スタッフの皆さんに主体的に取り組んでいただいたりしています。
みんなで力を合わせる共同作業
冬の間、仙台沿岸部は県内でも比較的温暖な地域とはいえ、土が凍結し、収穫できる時間帯が限られることがあります。MITUのメンバーだけでは、どうしても収穫作業に時間が足りなくなることも。そのため、比較的暖かな時間帯を選んで、スタッフの皆さんと一緒に収穫作業を行うことがあります。
特に、冬の農福連携の重要な柱となっているのが人参の収穫です。凍った土を丁寧に耕し、鮮やかなオレンジ色の人参を一本ずつ抜き取り、手際よく葉を切り落とす。この一連の作業を、スタッフの皆さんと私たちMITUのメンバーがそれぞれの役割を担い、黙々と進めていきます。また、私たちが掘り出した大根の葉をスタッフの皆さんが切り落としたり、収穫した野菜をカゴに入れて軽トラックまで運んだりする作業も、大切な共同作業です。
春先になると、いよいよ圃場の作付け準備が始まります。私たちの農場では、畑の土壌の状態に合わせて堆肥を施したり、カキ殻石灰や魚由来の肥料を使用したりすることがあります。これらの肥料を畑に均一に撒く作業も、スタッフの皆さんと一緒に行います。
MITUのメンバーだけでは時間のかかる作業も、皆で力を合わせることで、あっという間に終わらせることができる。これは、農福連携の大きなメリットだと感じています。
スタッフの個性を活かす、お任せする作業
MITUのメンバーとは別行動で、スタッフの皆さんにお任せする作業もあります。例えば、収穫が終わった後の圃場の片付けや、秋に収穫した小豆の脱穀・選別作業などです。
これらの作業は、事前に支援員の方と作業場所や手順などを細かく確認し、お互いの認識をしっかりとすり合わせた上で、スタッフの皆さんのペースに合わせて進めてもらいます。
圃場の片付けが得意な方、小豆の選別作業に集中力を発揮する方など、それぞれの得意なこと、個性を活かせるようにお願いしています。それぞれの能力を最大限に引き出すことで、作業効率の向上にもつながっています。
2025年現在の追記:仙台沿岸の冬は人参収穫一色
2025年現在、私たちの農場における冬の農福連携のメイン作業は、まさに「ひたすら人参の収穫」です。寒風吹きすさぶ中、凍てつく土の中からオレンジ色の人参を一本一本丁寧に掘り起こし、葉を切り落とす作業が連日続きます。
常に「できること」「連携できそうなこと」を探して
MITUでは、少量多品目の野菜を栽培しているため、冬の間も様々な作業が生まれます。日々の農作業の中で、「この作業ならスタッフの皆さんにできそうかな」「この作業は、とりあえず試しにやってもらおうかな」と常に考え、次にスタッフの皆さんがいらした際に、実際に作業をお願いしてみます。
また、毎年年初に年間の作付け計画を立てる際には、年間を通してどのような作業が発生するのかを大まかに洗い出し、どの作業を誰が(農業サポーターなのか、スタッフの皆さんなのか、私たち自身なのか)担当するのかを、ある程度決めています。
もちろん、計画通りに進むとは限りません。実際に作業に取り組んでもらいながら、支援員の方と密に連絡を取り合い、作業内容の調整を行ったり、私たち自身が作業方法を修正したりすることも、MITUならではのやり方かもしれません。
将来的には、私たちの農場だけでなく、近隣の農家さんで農福連携に興味を持っている方々と連携し、もっと多くの作業をスタッフの皆さんにお願いできるようになればと考えています。
スタッフの皆さんに作業を手伝っていただくことで、私たちは経営や販売といった他の重要な業務に時間を割くことができるようになります。そして、その結果として売上が向上すれば、スタッフの皆さんの工賃や給与のアップにも繋がると信じています。
「農福連携だ!」と意気込んで急に取り組んでも、様々な課題に直面する可能性があります。だからこそ、時間をかけて、福祉施設の方々とじっくりと話し合い、連携体制を構築していくことが大切だと考えています。
冬の寒さの中で、懸命に人参を収穫するスタッフの皆さんの姿は、私たちに大きな力を与えてくれます。共に土に触れ、作物を育てる喜びを分かち合う。農福連携は、私たちにとってかけがえのない取り組みです。これからも、それぞれの個性と能力を尊重しながら、共に成長していけるような農福連携のあり方を模索していきたいと思います。