【仙台の畑から】今年も始まる、甘くて力強い恵み。さつまいも定植、いざ!

春の陽気が心地よく、畑の土もようやく温まってきた今日この頃。
MITUの畑では、今年もいよいよあの季節がやってきました。そうです、さつまいもの定植です!

昨年以上に愛情を込めて育て、さらに美味しくバージョンアップしているかもしれない今年のさつまいもたち。今回は、震災からの復興の道のりを経て、この地に根付くさつまいも栽培への想い、そして農園の日常のひとコマをご紹介したいと思います。

震災が奪った、作物が育たない大地

MITUの前身となる農園がこの地に開園したのは、東日本大震災から約3年後のことでした。しかし、当時の農地は、震災後の復旧工事によって、地域の生産者たちが声を上げるほど、作物が育たない状態にありました。

復旧工事の内容は、塩分濃度の高い表土を削り、そこに山砂を入れるというものでした。しかし、実際に盛られた土からは大量のガレキが露出し、山砂ではなく粘土質の場所も多く、作物はまともに育たず、ガレキが邪魔をして農業機械すら満足に使えないという、想像を絶する状況でした。

その後、国主導のほ場整備事業が開始されました。当初の説明では、道路より低い農地を道路と同じ高さにするため、10〜20cmの山砂を盛り、すぐに作物が収穫できるような状態にするという計画でした。

しかし、工事が完了してみると、なんと道路よりも1メートル近くも山砂が盛られ、土壌改良剤として焼却灰が撒かれ、場所によっては工事前よりも水はけが著しく悪化するという、信じられない事態が発生しました。

このほ場整備に対しても、生産者サイドからは多くのクレームが上がり、2019年春には追加の暗渠工事が行われましたが、残念ながら効果が見られない圃場も多く、現在も生産者たちは仙台市に対し、土壌改良に向けた工事や機械購入の要望を出し続けているという厳しい現状があります。

このような過酷な圃場環境の中、地域の生産者たちは試行錯誤しながら作物を育てていますが、通常の畑に比べると収穫量はどうしても減少し、経営的に厳しい状況に置かれているところも少なくありません(私たちMITUもその一つです)。

そんな中、この地域で唯一と言えるかもしれない、震災前と変わらない土質の畑があります。それは、所有者の方が復旧工事などの影響からその畑を除外してくださり、震災直後にはボランティアの方々が懸命にガレキ拾いをしてくれた、奇跡のような畑です。

土質は、まるで砂浜のようなサラサラの海砂。強風が吹くと、全身が砂だらけになるほどです。MITUでは、この貴重な畑をお借りして、主に根菜類を育てています。

かつて、この地は芋の里だった?

MITUが活動している地域は、震災以前、多くの畑が砂質でした。保肥力が低く、乾燥しやすい砂質の土壌は、一般的な野菜栽培には決して恵まれた環境とは言えません。しかし、そんな中でも地域の生産者たちは諦めず、試行錯誤を重ねる中で、根菜類、特に芋類がよく育つことを発見し、芋類の栽培に力を入れてきました。

昭和の頃には、「じゃがいも」の産地化を目指していた時期もあったそうです。さつまいも栽培にも挑戦したそうですが、当時の気候は今ほど夏が暑くなかったため、収量が伸び悩んだことから、じゃがいもに注力するようになったと聞いています。

MITUでも砂質の畑でじゃがいもを育てることがありますが、確かにその生育の良さを実感します。しかし、連作障害も比較的起こりやすいため、毎年同じ畑に植えることができず、現在はさつまいもを中心とした栽培に移行しています。

震災後、この土地で力強く育ったのは…

就農した当初にお借りした砂質の畑は、砂質であるにもかかわらず、場所によっては水はけが悪く、足がズボズボとぬかるんでしまう箇所がありました。さらに、地下から塩水が上がりやすく、震災で防潮林が失われたため、海からの潮風が直接吹き付けるようになり、塩害も頻繁に発生していました。

様々な野菜を試しましたが、その過酷な環境の中で、唯一と言っていいほどまともに育ってくれたのが、さつまいもでした。就農開始当初は、被災地域でネズミが大量発生し、収穫したさつまいももほとんど食い荒らされるという被害に遭いましたが、「それでも収穫ができた」という事実自体が、私たちにとって大きな感動でした。今では、地域に猫やネズミを捕食する鳥も増え、生態系のバランスが回復してきたのか、ネズミの被害もほとんど見られなくなりました。

以来、この砂質の畑では、さつまいもを栽培するようにしています。塩害の影響からか、収穫したさつまいもがほんのり塩味になることもありますが、しっかりと甘く、力強い味わいの芋が育ちます。

MITUは、震災以前からこの地に根付く砂質の畑を大切に使わせていただきながら、仙台沿岸地域ならではの、力強い野菜作りに挑戦していきたいと考えています。

今年は昨年の1.5倍増し!芋愛が止まらない園主

砂質の畑との相性が抜群なさつまいも。無類の芋好きである園主の私は、年々その作付面積を拡大しています。そして今年は、なんと昨年の1.5倍の面積でさつまいもを栽培することにしました!

畑の約半分がさつまいも畑になる予定です。連作障害(一般的にさつまいもは連作障害が出にくいと言われていますが、同じ場所に植え続けると病害虫のリスクが高まります)のことも考慮すると、これが栽培面積の限界かなと考えています。

そして、今年植える品種は、私の厳選した(というより、完全に好みの)以下の4種類です。

  • 紅はるか: 焼き芋にすると、とろけるような食感と濃厚な甘さがたまらない、まさに蜜芋の代表格。干し芋にしても絶品です。
  • 紅東: 蒸して食べると、栗のようなほっくりとした食感が楽しめます。素朴ながらも奥深い甘さが魅力です。
  • シルクスイート: 長時間じっくりと焼き芋にすると、まるでスイーツのような滑らかな舌触りと、後を引く上品な甘さが特徴です。一度食べたら止まらなくなる美味しさです。
  • パープルスイートロード(紫芋): その鮮やかな紫色を活かして、紫芋の大学芋にするのが私の一番のおすすめ。見た目も華やかで、風味も豊かです。

…はい、完全に園主の好みで選んでしまいました(笑)。でも、自信を持って美味しいさつまいもをお届けできると確信しています!

一本一本に込める想い。さつまいもの植え付け

今年のさつまいもの苗は、約4000本。さつまいも専門の農家さんに比べれば、ごくわずかな数かもしれませんが、機械化されていないMITUでは、この苗を一本一本手作業で植えていきます。

ヘルニアと坐骨神経痛持ちの園主にとっては、休憩を挟みながら、他の農作業と並行して行うため、一日で植えられるのは1000本前後が限界です。植え終えた後は、すぐに湯船に浸かってストレッチをしないと、翌日には激しい腰痛に襲われてしまいます。

それでも、苗を植えるときには、いつもMITUのさつまいもを楽しみにして購入してくださるお客様の笑顔や、秋の収穫体験に来てくれる子どもたちの楽しそうな顔、そして何よりも、自分が美味しい芋を頬張る姿を想像しながら、一本一本丁寧に土に植え付けていきます。その作業は、大変ながらも、秋の収穫への大きな期待と喜びに満ちています。

順調に育てば、今年のさつまいもの収穫は9月下旬頃から始まる予定です。今年もまた、美味しいさつまいもを通じて、たくさんの笑顔と交流できることを心から楽しみにしています。仙台の厳しい環境で育った、甘くて力強いMITUのさつまいもを、どうぞお楽しみに!

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