農家が受け入れるときのポイントー農業と福祉のお話

 

2016年頃から農福連携という言葉を耳にし始め、その後、農福連携の取り組みが広がりはじめました。
農福連携には興味があるけど、どういう風に施設を探せばいいのだろう?実際に農家が受け入れるときにはどうすればよいのだろう?と疑問をもつ農家さんもいらっしゃるかと思います。このブログでは、私がこれまで行ってきたことの失敗談も含めて、農福連携で農家が受け入れるポイントについてお話していきたいと思います。 

施設を受け入れる前に

連携する施設を探す

農福連携に興味を持ち、障害者就労支援施設と連携する際に、まずどう施設を探すか悩みますよね。
私が施設を探すときには、どう探せばよいかわからなかったので、周りの知り合いや施設に聞いて回りました。探すのに時間がかなりかかったことを記憶しています。 

が、後に知ったのですが、実は施設を紹介してもらえる団体さんがあったのです。
宮城県の場合は、「みやぎセルプ協働受注センター」という団体さんがおり、ここに相談すると担当の方がお話を聞いてくださり、条件に合うような施設さんを紹介してもらえます。 

各県でも市町村で相談できる窓口や地域の共同受注窓口が増えてきたそうなので、ぜひ興味ある方は相談してみてくださいね。
わからない場合は各県、あるいは市町村の障害福祉課に相談すると情報を提供してもらえることがあります。

作業環境を整える

障害のある方の作業を受け入れる場合には、作業してもらうための環境を整える必要があります。

休憩できるようなスペース(雨に濡れず、夏の暑さをしのげるような場所)
トイレ

この2つは最低限必要です。
どうしてもすぐに準備ができない場合は、近隣の施設などを借りたりすることでも良いようです。
受け入れる側が法人の場合には、県や市町村によっては環境を整えるための費用を助成しているところもあるそうですので、チェックしてみて下さい。 

受け入れる際のポイント

すぐに契約せずにまずはお互いの理解を

環境も整い、施設も紹介してもらったところで、「すぐ契約だ!」と契約することは個人的にはあまりおすすめしません(場合によってはすぐに契約できません*1)

*1 
「施設外就労」という位置づけになるのであれば、施設側で市町村の福祉課に届け出を出す必要があるので、届け出の申請に時間を要することがあります。 

私自身の失敗談ですが、施設を紹介していただいた時にすぐに契約しようとしてなんの打ち合わせもせずに障がいのある方々を受け入れたことがありました。 
そこの施設とは「最低賃金以上」という条件で受け入れることになっていたのですが、作業はまったくできず、支援員の支援もなし、施設側との歩み寄りもなく一方的な対応だったため、受け入れが難しいと判断し契約しなかったことがありました。    

周りの農家さんでも施設側から一方的な条件を出されて、何の打ち合わせもなく作業をしてもらい大変な目にあったと憤慨された農家さんがいらっしゃいます。 
一方で、施設側も実際に農家さんのところに作業に行ったが怒鳴られた、などといったトラブルも耳にします。

まずは、お互いにじっくり時間をかけて打ち合わせや作業の流れなどを確認し、理解を深め、同意した時点で契約することをおすすめします。 

お試しで来てもらう期間を設ける

受け入れの際には、一定の期間お試しで来てもらったほうが良いと考えています。
農家さんの多くは障がいのある方の個性や特徴について触れることが初めてだと思いますし、施設のみなさんも本格的な農業に触れることはそう多くはないと思います。 

ですので、お試しできてもらう中で、農家側は障がいのある方一人ひとりにどんな個性や特徴があり、自分のところの作業でどんなことをお願いできそうか観察したり、支援員さんと話し合いながら模索する。試しに作業をしてもらい、障がいのある方同士、あるいは農家側とどうチーム編成をして仕事ができそうかを考える。 

こうしたことを支援員さんと協働でしていくことが大切かなと考えます。 

支援員さんも実際の農作業の中でどう障がいのある方が作業できるか、きっと一生懸命考えてくれますので。 

経営的な視点を忘れずに

福祉の分野に貢献したいから、と献身的になる方もいらっしゃるかと思います。
ただ、経営的な視点を忘れずに取り組むことが大切です。

私の場合は、農業を通して障がいのある方の支援をしたいという思いが就農しました。
なので、最初はすべてのことを障がいのある方々ありきで考えていたんです。

でも、ちょっと役割が違うかなと思うことがあり、そこからは視点を変え取り組むようになりました。
農家側としては経営的な立場から農福連携を考えないといけないと。 

といっても、安い賃金で労働力が手に入る!とか補助金や助成金が手に入る!という考えはNGです。
そんな考えで農福連携をすることは後々自分の首を締めることにもなるのでやめたほうがいいのではないかと思います。

この場合の経営的な観点というのは、自社の業務全体のマネジメントをすること、作業全体の効率化や作業分担をすることで売上を上げることを考える、という意味です。
チームとしてうまく機能すれば、作業をスムーズにでき、効率的になります。 
役割分担もできるようになれば、事業全体がうまく回り、農家さん自身が経営に専念する時間もできます。
売上を上げることができれば、障がいのある方の給料や工賃を上げることができます。 
より働きやすいよう環境を整えるための費用に充てることもできます。  

障がいのある方一人ひとりのケアやマネジメントは施設側のお仕事ですし、施設側は福祉的な観点から様々なアドバイスもくれます。
ですので、農家の経営的な観点と施設の福祉的な観点をすり合わせながら、お互いがより良い方向に進められればよいと思います。 

当園でもまだまだこれからやらねばならないことがたくさんありますが、日々仲間とともによいチーム、よい仕事を築いていきたいと思います。

最後に

いかがでしたか?
農福連携で農家が施設を受け入れる際のポイントを挙げてきました。
2020年頃から農福連携は「労働搾取だ」「健常者を雇用したほうがマシ」という言葉も多く耳にするようになりました。
私個人の意見としては、農福連携に興味のある農家、施設が話し合いやお試し期間を通し歩み寄ることでこういった誤解やトラブルを避けつつ、長期的な取り組みができるのではないかと考えています。

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