異常気象と物価高の荒波を越えて – 2024年、MITUが「生産」に集中する理由

2023年もいよいよ終わりに近づき、夏の記録的な猛暑の影響で販売できる野菜も限られる中、一年を振り返る時間が増えてきました。
周りの農家仲間と話していても、皆が口を揃えて「今年はこれまでで一番厳しかった」と言うほど、2023年の夏は私たちにとって非常に過酷なものでした。

しかし、過去を振り返ってみると、実は毎年何かしらの「ひどかった」出来事が続いていることに気づかされます。まるで、毎年が「ひどい」の連続であるかのように。

毎年繰り返される「ひどい」

記憶に新しいところでは、私たちの拠点である仙台沿岸地域では、2017年に36日間の連続降雨という異常事態に見舞われました。
それ以降も、毎年のように台風、豪雨、そして記録的な日照りが繰り返されています。これは決して仙台だけの話ではなく、日本全国、いや世界中の多くの地域で起こっていることでしょう。

異常気象に加え、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大も、私たちの農業経営に大きな影響を与えました。そして、これからも、このような予測不可能な異常気象や不測の事態は、残念ながら続いていくものと推測されます。

このような状況を踏まえ、一人の農家として、私たちにできることは何なのか。
様々な思いが巡る中で、やはり農業の基本である「土作り」と、それぞれの土地に合った「栽培」に真摯に向き合い続けるしかないのではないか、という考えに至りました。

もちろん、農業経営において収益性も非常に重要です。しかし、質の高い作物を安定的に生産し、それを販売できてこそ、健全な経営が成り立ちます。つまり、「生産」こそが、私たちの農業経営の根幹をなすものだと改めて認識したのです。

生き残り戦略の中で

異常気象に加え、原油価格の高騰をはじめとする物価高の影響で、農業資材や燃料など、あらゆるものが値上がりし続けています。
一方で、私たちが生産した農産物の取引価格は、長年ほぼ変わらないという厳しい現実が横たわっています。

このような状況の中、多くの農家がそれぞれの知恵と工夫を凝らし、生き残り戦略を模索しています。
人の雇用や最新設備の導入による規模拡大、自社で加工施設を設け商品開発を行う六次産業化、市場取引から直接販売への切り替え、あるいは福祉事業所を開設し農業以外の収益源を確保するなど、その戦略は多岐にわたります。

私の周りの農家仲間を見ても、それぞれの明確なビジョンのもと、新たな動きが活発化してきたように感じています。

では、私たち「MITU」は、この厳しい時代をどう生き抜いていくのか。私たちの出した答えは、「生産」にこれまで以上に集中する、というものでした。

これまでもブログなどを通して「生産に集中!」というメッセージを発信してきましたが、2024年からは、さらに作付けする品目を絞り込み、その限られた品目に、より一層の情熱と時間を注ぎ込むことにしました。
作付け品目を絞り込むまでには、長年の試行錯誤が必要でした。様々な要因を考慮する中で、すぐに栽培をやめるわけにはいかない品目もあったため、数年の時間をかけて、慎重に品目を整理してきました。

不器用だからこそ、一つのことを深く

私は、好奇心旺盛な性格で、興味を持ったことには「とりあえずやってみる」という性分です。
しかし、残念ながら、非常に不器用なため、それが上手くいった試しがあまりありません(笑)。

一方で、不器用だからこそなのかもしれませんが、一つのことに集中すると、そればかりを徹底的に深く掘り下げていくという一面も持ち合わせています。

自分のこのような性格を考えると、規模拡大や六次産業化といった多角的な経営に手を広げるよりも、これまで通り、いや、これまで以上に、黙々と「生産」という根幹の仕事に集中する方が、私たち「MITU」らしい生き残り戦略なのではないかと考えました。

近年、異常気象が頻発する中で、一つの作物に手をかける時間が増えています。
記録的な大雨が降れば、土地の低い場所にある畑の排水作業に追われ、圃場が水没したり、雨が降り続けば、病気の発生を抑えるために殺菌剤を散布したり、連日の猛暑の際には、何度も畑を往復して水やりを行います。

少しでも長く、一つの作物と向き合う時間が必要なのではないか。できる限りの手を尽くしても、その作物がうまく育たないこともあります。
しかし、少なくとも、できる限りのことをやった上でダメだったなら、「今年は運が悪かった」と諦めることができます。それまでは、後悔のないように、できる限りのことをやりたい。

これは、私のわがままなのかもしれません。しかし、そんな思いから、今、栽培する品目を絞り込み、自分の管理できる範囲の面積で、愛情を込めて育てていくという決断に至りました。

この判断が、将来的に吉と出るか凶と出るかは、今の時点では誰にも分かりません。
しかし、私自身はこの農業という仕事が心から好きなので、後悔のないように、思いっきり楽しんでいきたいと思います。最後は、少し感情的な話になってしまいましたが(笑)。


【参考】2023年 仙台近郊の天気概況

2023年の仙台近郊の天気は、全国的な傾向と同様に、記録的な猛暑に見舞われました。

  • 夏(6月~8月): 6月から厳しい暑さとなり、7月、8月は連日のように30℃を超える真夏日を記録しました。特に7月は、過去の記録を更新するほどの高温となり、農作物への影響が懸念されました。降水量は平年並みでしたが、局地的な大雨も見られました。日照時間は平年よりもかなり多く、乾燥した状態が続いたことも、野菜の生育に影響を与えました。
  • 秋(9月~11月): 9月は台風の影響を受け、一時的に大雨や強風に見舞われましたが、その後は比較的安定した天候となりました。10月、11月は気温も平年並みに推移し、秋の収穫期を迎えました。
  • 冬(1月~2月): 厳しい寒さに見舞われた時期もありましたが、全体的には平年並みの気温で推移しました。降雪量は平年よりもやや少なく、積雪も少なかったため、冬場の農作業への影響は比較的軽微でした。

このように、2023年の仙台近郊の天気は、特に夏の猛暑が際立ち、農家にとっては非常に厳しい一年となりました。この経験を踏まえ、私たちは今後の異常気象にも対応できるよう、より生産技術向上を目指した農業経営を目指していく必要性を改めて感じています。

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