前回の「堆肥にまつわる話」では、家畜糞堆肥には
少なからず重金属が含まれているというお話をしました。
また、私自身、まだ科学論文では見つけることが出来ていませんが、
ニワトリや豚、牛などの飼料には様々な成分(添加物等)も入っており、
それが「危ないのではないか」と心配されている方も
いらっしゃいます。
時折、MITUでも「安心できる肥料/堆肥ってあるの?」と質問を受けるときがあります。
このブログでは、そんな安心できる肥料/堆肥はあるのかを少し考えていきたいと思います。
目次
1.家畜の飼料と添加物
家畜の飼料には様々な添加物が入っていると言われています。
飼料は、飼料メーカーが作る「配合飼料」と自農園で配合する「自家配合飼料」
の2種類に分けることが出来ます。
自家配合飼料は各農家さんによりこだわりがあり、例えばニワトリの餌に
竹パーダーやエゴマ、ハーブ等を配合し与えていたりします。
添加物を使わずに健康に育てたい、より自然に近い形で家畜を育てたい、など
そこには農家さんそれぞれの想いがあります。
飼料メーカーが作る「配合飼料」は家畜が病気にならないようにしたり、
栄養を改善したり、卵をたくさん生ませるようにしたり、とより効率的に
「生産」できるような工夫がされています。
家畜に与える添加物は安全を確保するために、様々な検査が行われています。
(農林水産省「飼料の安全関係」)
一方で、養豚農家が廃棄された弁当を飼料として家畜に与えたところ、
奇形や死産の豚が多かったことから、添加物を多く含んだ食べ物は
危険である、というニュースも一部で広まりました。
(西日本新聞「食卓の向こう側」http://www.harmonicslife.net/Blog/2005/SavedPages/SickPigs/SickPigs.htmlより)
ただし、この件については科学的な根拠はなく、その後どうなったのか
追うことは出来ませんでした。
人間が直接添加物を摂取するにせよ、添加物まみれの飼料を食べた家畜を
人間が食べるにせよ、添加物=「身体に悪い」というイメージは少なからずあります。
余談ですが、私も添加物がたくさん入っている食べ物は苦手です。
特に、ハム等を食べると大概お腹を壊します。
2.飼料と遺伝子組み換え作物
添加物が含まれていること以外にも、「遺伝子組み換え作物」が
飼料に使われていることも「危ない」と言われる要因の1つとなっています。
遺伝子組み換え作物も賛否両論ありますが、日本では添加物同様に
安全性を確認されたものだけが使用されています。
この遺伝子組み換え作物を食べた家畜から作られた堆肥は、
腐敗しやすい=腐敗菌が土壌に住みつき農作物の生育が悪くなる、
遺伝子組換え作物=大量の化学農薬を使用=家畜も汚染=糞も農薬まみれ、
といったイメージがあり、「危険」であると考えられています。
(調べる限り、科学的な根拠は未だ不明)
遺伝子組換え作物は、食べることで遺伝子に異変をもたらす、
健康被害が出る、という情報もあることから、
さらにイメージが悪くなっていると考えられます。
余談ですが、ヨーロッパ圏(イタリア等)で遺伝子組換えの作物の健康被害を主張した論文が
出ましたが、試験内容に問題があり、その後取り下げられています。
遺伝子に関することは、日々研究が進んでいるのは事実。
人間が長期的に食べた場合の被害があるかどうかがわからないのも事実。
(ラット試験では問題なし、という研究発表はありますが、あくまでラット試験)
どう考えるかはあなた次第。
3.安心できる肥料/堆肥とは?
では、安心できる肥料/堆肥とは何でしょうか?
上記の観点から言えば、
(1)自家配合飼料を食べている家畜の糞堆肥
自家配合していて、添加物などを与えていない家畜を育てている
農家さんから堆肥を手に入れることができれば、安心できるかもしれません。
私の知り合いの養鶏農家さんは、餌を独自配合しており、
自然栽培で育てられたコメのくず米や野菜を主として、そこにエゴマを入れた飼料を
作っています。
添加物はなし。
平飼いで一坪当たりのにわとりの数もすくなく、ストレスが少ない環境で育っています。
鶏舎に入ると、一般の養鶏所のような糞尿の匂いはせず、
あまりに匂いがないことから驚くほどでした。
この養鶏農家さんのように、こだわって家畜を育てている農家さんから
堆肥を譲ってもらうのがよいと思います。
(2)草食系の動物の糞堆肥
草食系の動物は、牧草を主として食べていることが多いので、
安心できるものであると言われています。
競走馬は、添加物(ビタミンやミネラル)を摂取することもあるそうですが、
餌は牧草の種類で調整されていることが多いようです。
私も以前、土壌の先生から「草食系の動物の堆肥が安心できると思うよ」と
アドバイスいただいたことがあります。
(3)緑肥
緑肥とは、畑に肥料となる植物の種をまき、ある程度の大きさになったら刈って
畑にすき込むことを言います。
マメ科の植物やイネ科の植物を育て、それをすき込んで肥料にすることが
一般的です。
この方法では、動物性の肥料/堆肥を使わずに、植物由来の肥料で
農作物を育てることが出来ます。
MITUでは
MITUでは、緑肥を主軸にして、状況を見ながら牛ふん堆肥や馬糞堆肥も使用しています。
仙台の一部の圃場では、震災後に工事が入り土の入れ替え作業等が繰り返され、雑草も
生えない畑になったことから、必要に応じて化学肥料を少量使う場合もあります。
より自然に近い状態で野菜を健康に育てるためにはどうすればよいか。
考えに考え、「緑肥」中心に野菜を育てることが
健康な野菜作りへの道だという選択をしました。
まだまだ至らぬ点も多いのですが、この緑肥栽培をこれからも
深めていくつもりです。