前回の「堆肥にまつわる話」(https://sizennouenmitu.com/archives/990)では、家畜糞堆肥には少なからず重金属が含まれているというお話をしました。
また、私自身、まだ科学論文では見つけることが出来ていませんが、ニワトリや豚、牛などの飼料には様々な成分(添加物等)が入っていたり、遺伝子組み換え作物の入った飼料を家畜が食べているため、「危ないのではないか」と心配されている方もいらっしゃいます。
時折、当園でも「安心できる肥料/堆肥ってあるの?」と質問を受けるときがあります。
このブログでは、そんな安心できる肥料/堆肥はあるのかを少し考えていきたいと思います。
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家畜の飼料と添加物
家畜の飼料には様々な添加物が入っていると言われています。
ここで、簡単に飼料について見ていきます。
飼料は、飼料メーカーが作る「配合飼料」と自農園で配合する「自家配合飼料」の2種類に分けることが出来ます。
添加物まみれと指摘されているのは「配合飼料」と言われています。
飼料メーカーが作る「配合飼料」は家畜が病気にならないようにしたり、栄養を改善したり、卵をたくさん生ませるようにしたり、とより効率的に「生産」できるような工夫がされています。家畜に与える添加物は安全を確保するために、様々な検査が行われています(農林水産省「飼料の安全関係」)。
自家配合飼料は各農家さんによりこだわりがあり、例えばニワトリの餌に竹パーダーやエゴマ、ハーブ等を配合し与えていたりします。
添加物を使わずに健康に育てたい、より自然に近い形で家畜を育てたい、などそこには農家さんそれぞれの想いがあります。
添加物は危険?
養豚農家が廃棄された弁当を飼料として家畜に与えたところ、奇形や死産の豚が多かったことから、添加物を多く含んだ食べ物は危険である、というニュースも一部で広まりました。
(西日本新聞「食卓の向こう側」http://www.harmonicslife.net/Blog/2005/SavedPages/SickPigs/SickPigs.htmlより)
ただし、この件については科学的な根拠はなく、その後どうなったのか追うことは出来ませんでした。
人間が直接添加物を摂取するにせよ、添加物まみれの飼料を食べた家畜を人間が食べるにせよ、添加物=「身体に悪い」というイメージは少なからずあります。
しかし、人間の食べ物に使われる添加物は、
・安全性を保つため
・味や香りを高めるため
・風味や食感を出すため
・栄養を高めるため
という4つの役割があり、特に安全性を保つためには必要なのではと考えています。
一方で1日の許容摂取量がそれぞれ定められており、大量に食べると健康を害する危険はあります。
個人的な見解ですが、豚が廃棄された弁当を飼料として食べたのは、純粋に許容摂取量を超えた量だったのではと推測しています。
飼料と遺伝子組み換え作物
添加物が含まれていること以外にも、「遺伝子組み換え作物」が飼料に使われていることも「危ない」と言われる要因の1つとなっています。
遺伝子組み換え作物も賛否両論ありますが、日本では添加物同様に安全性を確認されたものだけが使用されています。
この遺伝子組み換え作物を食べた家畜から作られた堆肥は、
腐敗しやすい=腐敗菌が土壌に住みつき農作物の生育が悪くなる、
遺伝子組換え作物=大量の化学農薬を使用=家畜も汚染=糞も農薬まみれ、
といったイメージがあり、「危険」であると考えられています(調べる限り、科学的な根拠は未だ不明)。
遺伝子組換え作物は、食べることで遺伝子に異変をもたらす、健康被害が出る、という情報もあることから、さらにイメージが悪くなっていると考えられます。
ヨーロッパ圏(イタリア等)で遺伝子組換えの作物の健康被害を主張した論文が出ましたが、試験内容に問題があり、その後取り下げられています。
遺伝子に関することは、日々研究が進んでいるのは事実。
人間が長期的に食べた場合の被害があるかどうかがわからないのも事実。
(ラット試験では問題なし、という研究発表はありますが、あくまでラット試験)
厳格な安全性基準に従っていることも事実。
どう考えるかはあなた次第。
個人的な見解としては…
遺伝子組み換え作物を食べた家畜の堆肥=腐敗しやすい、はメカニズムがよくわかりません。
腐敗菌が住み着くという主張では、畑に散布する時に充分発酵していたか?といったことも関係してきますし、未熟な有機物を入れると腐敗菌が一時的に増えるのは普通に考えられることです。
また、遺伝子組換え作物=大量の化学農薬を使用という部分は、むしろ遺伝子組換え作物を導入することで農薬の使用量を減らすメリットがあると言われています。
一方で、遺伝子組換え作物導入の有無に限らず、除草剤や殺虫殺菌剤を空中散布し近隣住民にかかってしまうことで健康を害してしまうというケースもあることから、こちらのほうが問題なのではと考えます。
安心できる肥料/堆肥とは?
では、安心できる肥料/堆肥とは何でしょうか?
自家配合飼料を食べている家畜の堆肥
自家配合していて、添加物などを与えていない家畜を育てている農家さんから堆肥を手に入れることができれば、安心できるかもしれません。
私の知り合いの養鶏農家さんは、餌を独自配合しており、自然栽培で育てられたコメのくず米や野菜を主として、そこにエゴマを入れた飼料を作っています。
添加物はなし。平飼いで一坪当たりのにわとりの数もすくなく、ストレスが少ない環境で育っています。
鶏舎に入ると、一般の養鶏所のような糞尿の匂いはせず、あまりに匂いがないことから驚くほどでした。
この養鶏農家さんのように、こだわって家畜を育てている農家さんから堆肥を譲ってもらうのがよいと思います。
草食系の動物の堆肥
草食系の動物は、牧草を主として食べていることが多いので、安心できるものであると言われています。
競走馬は、添加物(ビタミンやミネラル)を摂取することもあるそうですが、餌は牧草の種類で調整されていることが多いようです。
私も以前、土壌の先生から「草食系の動物の堆肥が安心できると思うよ」とアドバイスいただいたことがあります。
当園では、馬糞堆肥を使うこともありますが、アンモニアのツンとした匂いがするものと匂いのしないものがあるので、そこがちょっと気になる点です。
馬糞堆肥は近くに乗馬クラブ等があればもらうことが可能な場合もありますし、ネットショップでも下記のような商品が購入できます。
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当園では、県内にある「えにしホースパーク」さんから購入しています(http://missionpossible.main.jp/02/taihi.html)
緑肥
緑肥とは、畑に肥料となる植物の種をまき、ある程度の大きさになったら刈って畑にすき込むことを言います。
マメ科の植物やイネ科の植物を育て、それをすき込んで肥料にすることが一般的です。
植物性の肥料/堆肥
最近では植物性堆肥が市販されるようになってきました。調べてみたところ、楽天市場でも下記のような商品が販売されています。
植物性の堆肥/肥料は自然栽培・有機栽培の方が使うこともあります。
肥料の効き方としてはじっくり効くタイプのものが多いです。
他にバーク堆肥もありますが、個人的にバーク堆肥はオススメしていません。
充分発酵しているか判断が難しい点とダニなどの虫が増えやすい傾向があるのが理由です。
アミノ酸肥料
アミノ酸肥料にも色々あるのですが、魚のエキスから抽出された肥料がおすすめです。
即効性の肥料なので使い方は追肥や栽培期間の短い作物に使われることが多いです。
当園で使用しているアミノ酸も魚エキスと米ぬかのみで作られたものをメインに使用しています。
いかがでしたか?
添加物や遺伝子組換え作物を食べた家畜の堆肥を使うことに抵抗がある場合は、植物性のものや草食系、アミノ酸系の肥料や堆肥を使ってみるのもいいかもしれません。