あなたは「ヤーコン」という野菜をご存知でしょうか?南米アンデス山脈が原産とされる、キク科の根菜で、見た目はサツマイモに似ていますが、シャキシャキとした食感とほんのりとした甘みが特徴です。オリゴ糖を豊富に含んでいることでも知られています。
MITUでは、まだ家庭菜園だった頃から、かれこれ10年以上ヤーコンを育てています。今年もまた、この不思議な魅力を持つヤーコンの栽培がスタートしました。
今回のブログでは、私たちがどのようにヤーコンを育てているのか、少しだけご紹介したいと思います。
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ヤーコン、それは株分けから始まる!
ヤーコンを育てる最初のステップは、「株分け」という作業です。ヤーコンは、土の中に地下茎と呼ばれる茎があり、そこからいくつもの新しい芽を出します。栽培する際には、この地下茎についた新芽の部分を一つずつ丁寧に分けて、それぞれを新たな苗として植え付けます。
ここで注意しておきたいのが、ヤーコンの品種によっては、農林水産省によって「自家増殖禁止」とされているものがあるということです。主に、比較的新しく育種された品種にこの規制があるため、栽培する際には事前に確認が必要です。
幸い、私たちの農園で長年栽培しているのは、「ペルーA系統」という昔ながらの品種で、自家増殖の制限はありません。
この株分け作業は、毎年4月の上旬頃に、黙々と、そして丁寧に行われます。今年は、例年よりも少し規模を拡大し、約950株のヤーコンを一つ一つ丁寧にポットに植え付けました。もちろん、すべての株が順調に育つとは限りません。発芽しなかったり、生育途中で元気がなくなってしまう株も出てくる可能性があるため、最終的な植え付け予定は約900株として計画しています。
宮城の春の寒さに負けないように。ハウスでの育苗
ヤーコンは、寒さが苦手な野菜です。せっかく葉が伸びてきた後に霜に当たってしまうと、一気に枯れてしまうことがあります。そのため、宮城県で遅霜の心配がなくなる5月中旬頃までは、ハウスの中で大切に育苗を行います。
育苗期間中は、水やりの管理が非常に重要になります。水をかけすぎると根腐れの原因になりますし、乾燥させすぎると生育が滞ってしまいます。同じように水をかけたつもりでも、ポットの場所によって水分量が微妙に異なるため、毎日、一つ一つのポットの状態を観察しながら水やりを行うように心がけています。
下の写真は、ハウスの中で大切に育てられ、いよいよ畑への植え付けを目前に控えたヤーコンの苗の様子です。緑の葉が力強く伸び、生命力に満ち溢れています。
(ここに育苗中のヤーコンの写真を挿入)
植え付けに向けて、畑の準備!
私たちの農園では、基本的に2名で、宮城県北の大崎市古川の圃場と、ここ仙台の圃場、合わせて約1.5ヘクタールの広さで様々な野菜を栽培しています。そのため、栽培方法もできる限り省力化を図るように工夫しています。
ヤーコンの植え付けにあたっては、まず畑に黒いマルチシートを張る作業から始めます。マルチシートには、地温を上げ、雑草の抑制、そして土壌の乾燥を防ぐ効果があります。
畝と畝の間隔は、農家さんによって様々なようですが、私たちの農園では、障害のある方も一緒に作業をするため、少し広めに設定しています。広い畝間は、作業のしやすさだけでなく、風通しを良くし、病気の発生を抑える効果も期待できます。
また、畝と畝の間には、ヤーコンとは別の作物を植えることも検討しています。コンパニオンプランツと呼ばれる、互いの生育を助け合う植物を組み合わせることで、より豊かな畑を目指しています。
いよいよ、畑へ!ヤーコン定植
畑の準備が整ったら、いよいよヤーコンの苗を植え付ける作業です。
植え付ける前に、マルチシートに植え付け場所を示す印(穴)を開けておきます。そして、その穴に一つ一つ丁寧にヤーコンの苗を植えていきます。
定植器という道具を使うことが多いのですが、土のかけ具合が微妙だったりすることもあるため、一つ一つの苗の状態を確認しながら、丁寧に植え付けていきます。この作業は、地道で時間もかかりますが、秋の収穫を夢見て、心を込めて行います。
植え付けが終わった後は、ヤーコンの生育の様子を観察しながら、必要に応じてミネラルや微生物資材(乳酸菌や納豆菌などを培養したもの)を葉面散布していきます。これらの資材は、ヤーコンの生育を促進し、病害虫への抵抗力を高める効果が期待できます。
東北地方でのヤーコンの収穫時期は、例年11月、霜が降り始める頃です。アンデスの大地からやってきたこの不思議な野菜が、今年も私たちの畑で元気に育ってくれることを願いつつ、収穫の日まで大切に見守っていきたいと思います。秋には、シャキシャキとした食感と優しい甘さのヤーコンを、皆様にお届けできることを楽しみにしています。
【2025年追記】ヤーコン栽培中止のお知らせ
2023年まで長年栽培してまいりましたヤーコンですが、誠に残念ながら、2024年以降の栽培を当面中止することにいたしました。
主な理由としましては、近年の夏の猛暑による株の枯れと、それに伴う収穫量の激減が甚大であるためです。ヤーコンは比較的暑さに弱いとされる野菜であり、仙台においても近年、記録的な猛暑となる日が多く、株が十分に生育する前に枯れてしまう、あるいは収穫できたとしても品質が著しく低下してしまうという状況が続いておりました。
これまで、様々な対策を講じてまいりましたが、現状では安定した収穫量を確保することが難しいと判断いたしました。
長年にわたり、MITUのヤーコンを楽しみにしてくださっていたお客様には、心よりお詫び申し上げます。ご理解いただけますと幸いです。
今後は、ヤーコン栽培で培った経験を活かし、この地域の気候変動にも適応できる新たな野菜の栽培に力を入れていきたいと考えております。これからもMITUの野菜作りにご期待いただければ幸いです。