今年こそ、この畑を次のステージへ!排水対策と土との格闘 – MITUの挑戦

「今年こそは、今年こそは、この畑をもっと良い畑にしてやる!」

毎年、静かに、しかし心の中では燃えるような決意を抱きながら、私たちは畑と向き合っています。
MITUで耕作している畑の多くは、2年前にほ場整備事業という大規模な工事を経た場所です。工事が終わって間もない頃から、私たちがこの土地を借り受け、野菜作りに励んでいます。
圃場整備後の畑での野菜作りは、まさに「土を育てていくとは何か」を教えてくれる試練の連続です。複数ある畑の中でも、特に課題が多い場所では、常に新たな思考と試行錯誤が求められます。

このブログでは、MITUが「土を育てていくとは何か」を真剣に考え、自然と対話しながら野菜作りに奮闘している現場の様子を、ほんの少しだけお見せしようと思います。

何も育たなかった絶望の1年目

「土壌改良して山砂も入れるから、堆肥とか肥料をきちんと入れれば、1年目からそれなりに育つはずだよ」

そんな言葉を信じ、畑を借り受けてすぐに堆肥を投入。まず最初に取り組んだのは、ソルゴーという緑肥の栽培でした。土を豊かにすることから始めようと考えたのです。

ソルゴーは予想以上に順調に育ち、夏の盛りには畑にすき込みました。そして迎えた秋冬野菜の栽培。手始めに選んだのは、私たちの食卓にも欠かせないキャベツでした。

しかし、1年目の2017年。仙台を記録的な長雨が襲い、連続36日間という信じられないほどの雨が降り続きました。キャベツの苗を植えるタイミングは1ヶ月以上もずれ込むという異常事態。
「収量不良を天候のせいにしてはいけない」と常々言われていますが、あの時ばかりは、為す術もなく途方に暮れたものです。

雨が止んだ後も、畑はまるで巨大なスポンジのように水分を含み続け、2週間以上も足を踏み入れることができませんでした。ぬかるんだ地面に無理やり苗を植え付けましたが、やはりキャベツは全く育たず、そのまま畑にすき込むという苦い経験となりました。

二度目の挑戦、見え始めた小さな光

圃場整備前から、この畑はあまり水はけが良い方ではなかったといいます。翌年、私たちはナスやピーマンなどの夏野菜を育てることに決め、前年と同様に堆肥を投入。さらに、微生物を培養した液体や「腐植酸」という土壌改良資材を加え、少しでも水が抜けるようにと「明渠」を設け、二度目の挑戦に臨みました。

2018年は、前年とは打って変わって雨の少ない夏でした。私たちは毎日欠かさず水やりを行い、夏後半になるとようやく雨が降り始め、畑は潤いを増しました。しかし、潤ったのは良かったものの、やはり根本的な水はけの悪さは解消されません。明渠を設けても水は溜まったままで、野菜の根は水分過多による根傷みで生育障害を起こしていました。

2017年に比べれば、野菜の収穫量はわずかに向上したものの、計画していた量の半分以下。2年連続の不作に、私たちは大きな課題を感じながら、2019年度の計画を立て始めた時でした。

救いの知らせ、暗渠工事の実施

2018年の冬、農政局から一本の電話がありました。

「実は、圃場整備した圃場の水はけが悪いという声が多くの生産者から寄せられており、来年春先から暗渠工事をすることになりました」

暗渠工事とは、地表から70〜80センチ下の地中に排水管を埋設し、排水性を大幅に改善する工事のこと。水はけの悪い圃場では、まさに救世主となる工事です。

この暗渠工事は地域全体で行われ、私たちの地域では2〜3月に第一弾が実施され、その後はそれぞれの畑の作付け状況に応じて順次行われる予定でした。幸いなことに、私たちの畑では3月いっぱいで工事を終えてもらうことができました。

膨らむ期待と、拭えない嫌な予感

暗渠工事が完了し、周囲の農家仲間からは「これで水はけが良くなって、収量がぐんと伸びるかもしれない!」という期待の声が聞かれました。
しかし、工事の様子を間近で見ていた私は、なんだか拭えない「嫌な予感」を抱いていたのです。

何度も何度も、巨大な重機が畑の上を行き来していました。その結果、畑の表面はまるでコンクリートのようにカチカチに固まってしまったのです。

「これは表面をトラクターで耕うんしても、もしかすると水はけの悪い状態が地中に残ってしまうのではないか…」

そんな不安が頭をよぎりました。

工事が終わるとすぐに、私たちは再び堆肥を投入し、トラクターで何度も丁寧に耕うんしました。さらに、前年同様に微生物培養液と腐植酸に加え、ミネラル資材も投入。表面の硬化は何とか解消されました。

あとは、雨が降った後に畑がどのような状態になるかを確認するだけです。トラクターで耕うんしてから約3週間後、ようやくまとまった雨が降ってくれました。
以前なら、雨が降ると2週間以上もぬかるんで足を踏み入れることすらできなかった畑が、暗渠工事後には降雨から2、3日で表面が乾いていたのです。「これは、今までにない乾き具合で本当にびっくりだ」と、仲間と顔を見合わせて驚きました。

しかし、安堵したのも束の間。降雨後、10日ほど経った頃、ちょうどキャベツやレタスの定植をするタイミングで畑に入ると……
地表から20センチくらいのところで、再び水が溜まっており、地面はぐちゃぐちゃの状態だったのです(涙)。
それでも、他の畑にはもう苗を植える場所がなく、私たちはこの畑にキャベツとレタスを植えざるを得ませんでした。

ひとまず機械で無理やり畑に進入し、高さ20センチほどの高畝を作りました。そこにキャベツとレタスの苗を丁寧に植え付けたのです。高畝にしたことで、苗が植えられた部分は適度に土が乾き、今のところ比較的順調に育っています。

男は黙って穴を掘る!

キャベツとレタスがなんとか育つ最低限の環境を整えた後、私たちは土壌の状態を詳しく調べることにしました。今回は、棒を地面に刺して、どのくらいの深さまで入るかを調べたり、穴掘り器を使って実際に土を掘り、断面を目視で確認するという、比較的簡単な調査です。

畑の数十箇所を調べていくと、驚くべきことに、地表から20センチ付近と、さらにその下1メートルくらいの深さに、明らかに硬い層、いわゆる「硬盤」が存在することが分かりました。

どうやら、この硬盤こそが、長年の水はけの悪さの根本的な原因だったようです。

ここからは、特に水はけが悪いと推測される場所をひたすら穴掘り器で掘り進めていきます。黙々と、一箇所あたり約1メートルの深さまで穴を掘る作業を繰り返しました。

穴を掘っていくと、面白いことに、硬盤を通過した瞬間に、土を掘る感触が明らかに変わるのです。それまでゴリゴリとしていた抵抗感がなくなり、サラッとした感触に変わります。硬盤を通過してその下にある土を観察すると、信じられないほどサラサラで、ほとんど乾いた状態でした。

何十箇所も根気強く穴を掘り続けると、以前に比べて畑の水はけが明らかに改善されたのです。

さらによい土壌を目指して

もちろん、穴を掘り続けたからといって、すぐに理想的な土壌に変わるわけではありません。しかし、最悪の状態からは脱することができたため、ここからは新たな段階へと進みます。

まず取り組むのは、緑肥の中でも根を深く張るタイプの植物を植えること。これにより、硬盤を少しずつ物理的に破壊していくことを目指します。

また、私たちの畑の土壌には、微生物が少ないのではないかと推測しています。そこで、微生物が増殖しやすい環境を整えることも重要な課題です。高価な測定機器がないため、土壌中の微生物そのものを直接数えることはできませんが、微生物を餌とする土中生物の数を指標とします。土中生物がある程度存在していれば、微生物も一定数存在しているだろうという考えに基づいています。

一般的に、良い土壌とは、以下の3つの要素がバランス良く整っている状態だと考えられています。

  • 物理性: 土の硬さ、通気性、保水性といった物理的な環境が最適化され、植物の根が自由に伸びることができる状態。
  • 化学性: 植物の生育に必要な養分がバランス良く含まれており、pHなどの化学的な性質も適切に保たれている状態。
  • 生物性: 多種多様な微生物や土壌生物が生息し、有機物の分解や養分の循環など、土壌生態系が健全に機能している状態。

今回の圃場整備事業は、私たちにとって、ある意味で土壌改良の基礎から考え直す貴重な機会となりました。これまで何年も畑として使われてきた場所も、かつては私たちと同じように、先人たちが少しずつ土を改良し、「畑」という豊かな恵みを生み出す場所に変えていったのだと、改めて思い知らされました。

経営的な観点から見れば、圃場整備後の畑は正直なところ、苦労が多く厳しい場所です。しかし、農業に携わる者として、「土を育てていくための方法」を深く学ぶ上では、何にも代えがたい貴重な経験となっています。

これだから、農業は本当に楽しくて、決してやめることはできません。

土が、自然が、植物を育んでいくという根源的な力を忘れずに、これからも私たちはこの畑で、新たな挑戦を続けていきます。

関連記事

  1. 農福連携での作業の安全面はどうする?-農福連携のお話④

  2. 自然栽培ってどんな育て方をするの?

  3. 知られざる健康野菜、ヤーコンの魅力に迫る!栽培者の熱い想いと美味しい食…

  4. 小豆のチカラー園主がただの小豆好きという話

  5. 【仙台の畑から】今年も始まる、甘くて力強い恵み。さつまいも定植、いざ!…

  6. 【仙台の農家が語る】師匠との出会いが人生を変えた!新規就農からの転換と…