異常気象が頻発する中、農家として大事なスキルとは?

先日、ふとラジオを聴いていると、「自然はバランスを保とうとする。ある時に雨がふらなければ、その後雨が降る。その循環なんです。」 
そう東北大学の農学部の先生がおっしゃっていました。 

仙台では、2017年夏、観測史上初の36日間連続降雨となり、昭和9年の昭和東北大飢饉を超える記録となりました。
この反動はいつ来るのだろう。 
そう思っていたら、2018年の夏(実際には春ころからですが)は雨がほとんど降りません。

私たちの農園がある仙台沿岸部は、海が近いだけに雨には縁がちょっとない地域です。  
気象台のデータでも「塩釜」や「石巻」と似た気候のため、石巻のデータを参照すると、降雨量は6月は平年比の26%、7月も平年比を40%割る結果になりそうです。 

昨年とは真逆の天気。まさに自然がバランスを保とうとしているかのようです。 

ここ数年、毎年のように続いている異常気象。
これに加え、2020年には新型コロナウイルスの影響などもあり、農作物の過剰供給と価格暴落も続いています。
こういった厳しい状況が続く中、農家として大事なものとは何かを自分なりに考えていこうと思います。

いつの時代も大事なのは…

毎年のように続いている異常気象、その影響で野菜が収穫できなくなった、あるいは収穫できても価格が暴落していて値がつかなかった、という事態は私自身も経験していますし、周りも同じ状況です。
このような状況の中、農家にとって大事なスキルとは何か?

それは、栽培スキルだと考えています。

これはいつの時代でも大事だと思います。
近年では栽培スキルよりもマーケティング力が大切だという話も耳にします。
もちろん、マーケティング・販売力、営業力などの経営していく力も必要なのですが、農家の場合、その根底に栽培スキルがないとどうにもこうにもできないというのが個人的な考えです。

天候が安定している時は、どんな人でも大概のものは育て収穫できます。
でも、異常気象の場合は、その人の栽培スキルが問われると思うんです。
例えば、異常気象下である人が育てた農作物の収穫量が作付面積の2割だったとして、別の人は収穫量が6〜7割収穫できたりしています。
この差こそが栽培スキルです。
栽培スキルは品質の良い野菜をたくさん取るだけではないと考えています。異常気象や何かしらの異変が起きた時に対処し、そのような状況下でも一定量の収穫ができる、これも栽培スキルだと思っています。

栽培スキルが皆無だった私の話

私は2013年に新規就農しました。
それから自分なりに試行錯誤しながら、農業を続けています。

私が「圧倒的に栽培スキルが足らない」とひしひしと感じるようになったのは2017年頃からでした。

ちょうどその頃、私の地域では国の震災復興関連の事業で田畑の造成・圃場整備が入り、新たに畑ができたタイミングでした。
新しく造成された畑での作付け、これだけでも「土作りには5〜10年かかるし、大変だよ」と言われていたのです。
そして、追い打ちをかけるようにこの年、夏に連続36日間雨が振り続けました。

畑の作物は収穫こそできましたが、予定の2割程度と非情に厳しい状況でした。
この時、「この天候はもう人間ではどうしようもない、諦めるしかないのか」と考え、「もうこんな災害級の天候は続かないだろう」と甘く見ていた部分もありました。
でも、2018年は高温と乾燥が続き不作、2019年には東日本台風で水没し壊滅的な被害が出ました。

もう毎年のように何かしら起きていたんです。
でも、恥ずかしながら、こうした天候が続く際の対応策を私は知りませんでした。
「異常気象には立ち向かえない」と半ば諦めつつも、「このままでは離農せざるをえなくなる」という危機感もありました。

何をどうしたらいいかわからないほど切羽詰まった状況でした。
わらもすがる思いで色んな人に相談しました。

「無農薬の野菜を高付加価値で販売したらいいんでないか」
「インターネット販売でやれば成功できる」
「六次化していきましょう」

といろんなアドバイスを受けました。
でも、そもそも販売できる農作物の収穫量が少なかったので改善策にはなりませんでした。

ここでようやく「自分には栽培スキルが圧倒的に足りない」と気づいたんです。

学ぶべきは先人と自然

自分には圧倒的に栽培スキルが足りない、そう気づいてからは、とにかくいろんな本や論文を読み漁ったり、SNS等を駆使して栽培スキルを上げる方法を集めました。
ここでわかったのは、栽培スキルは栽培スキルが高い人から教わるのが一番であること、そして畑とじっくり向き合い観察をすること、でした。

もちろん、本や論文を手当り次第読みまくってもある程度栽培スキルを上げることは可能だと思います。
実際、私が今お世話になっている師匠が話す内容は本や論文で調べまくった内容と一致するからです。
でも、本や論文を調べまくるには膨大な時間がかかります(実際にかかりました)。

なので、人から教わるのが一番早く着実なのだと考えています。

また、人に教わるだけではなく、観察する力も同じくらい大切なスキルです。
それぞれの地域で気候や土質は違いますし、さらには同じ地域でも畑によって違い舞うし、もっと言うと同じ畑でも場所によってクセが違うんです。
この違いを理解し、植物や土が見せる変化を見て、それに合わせて対策をうつ。

この栽培スキルは、IT化が進んで先人からの農業技術を情報化しても得られないスキルなのではないかと考えています。

私は運良く、栽培を中心に農業経営を指導してくれる方と出会うことが出来ました。

2022年以降の農業は変革期へ

2022年以降、農業は変革期へ突入すると言われています。

続く異常気象
長引く新型コロナの影響
農業資材の高騰
農作物の過剰供給と価格の低迷
人口の変化と食の変遷
トンガの火山噴火(→この噴火の影響は数年続くと考えられています)

良くも悪くも農家は淘汰され、その数は減っていくことが予測されています。
この変革期を生き延びるのに必要なのは、栽培スキルと経営力だと考えています。

私も美味しくて健康な野菜をお客さんに届けるだけでなく、異常気象などが続いても安定してお客さんに届けられるようスキルUPしていきます。

関連記事

  1. どうして野菜が必要なの?

  2. 家庭菜園の土作り!―自然農園的視点から

  3. 適材適所?得意なことを生かして施設外就労をしよう―農福連携の話

  4. 農家になるなんて、やめたほういいんじゃない?

  5. 仙台沿岸の畑は何故、土が良くないのか?

  6. 野菜農家の料理チャレンジ!-さつまいもケーキ