農業と福祉のお話その2−個性に合わせた作業では、農福連携を進める上で、時間をかけて障がいのある人一人一人の個性や特技に合わせた作業を掘り起こし、当てはめていくことが大切なのでは、と述べました。
今回は、その続きのお話で、個からチームへというお話をしていきます。
Table of Contents
個性に合わせた作業を掘り出したあとは?
時間をかけて一人ひとりの個性や特技と農作業を当てはめたあと、その次を考えます。
全体として、その時期の一連の作業をどう組み立てていくかをというところです。
農業経営という観点からは、ある程度の作業の効率化や全体の業務の流れを良くすることが大切になってきます。
経営が立ち行かなくなっては、障がいのある方ができる仕事もなくなってしまいますし、自分自身の生活や仕事もなくなってしまいますので。
よくお金を稼ぐことは良くない!と主張される方もいらっしゃいますが、現代社会で生活するため、仕事を続けていくためにはある程度のお金も必要です。
ですので、農家側としては全体の作業効率を良くして売上UPすることで経営の安定を図ることと障がいのある方へ工賃や給料として還元していくことを目標に考えていくことが大切なのでは、と考えています。
障がいのある方に「もっと早く作業して!」と要求するのはお門違い。
個々の特性や個性を活かしたチームを作ることが作業効率のUPを求める鍵となると考えています。
たとえ一人で一連の作業をこなせなかったとしても、チームで一連の作業をスムーズに行えるようになれば結果良くなりますよね。
障がいのある方同士のチーム
障がいのある方と農家とのチーム
どんな形でも良いので、チームとして活動していくように考えていきます。
チームになるからこそ
農福連携をする上で、お互い大きな負担がなく、役割分担をして、全体の作業が効率的に回る仕組みができれば良いと考えています。
例えば、MITUではさつまいもを収穫する際、障がいのある方(以後、スタッフと呼びます)にさつまいものツタ切りやマルチ剥がしをしてもらいながら、MITUのメンバーがひたすら芋掘りをする。MITUのメンバーがカゴにいれたさつまいもをスタッフが軽トラまで運ぶ。
といった感じで、その時々でお互いの役割分担を決め、効率的に作業をするよう心がけています。
スタッフを見ていても、ツタを切るのが得意な人、マルチを剥がすのが得意な人、さつまいもの入ったコンテナを運ぶのが得意な人、といった感じでそれぞれの得意なことを活かして作業をしてもらっています。
スタッフ1人では1のことしかできなかったとしても、1つのチームになれば10のことができる。
チームには、作業の効率化だけではないメリットもあると感じています。
作業の中で生まれるコミュニケーションやみんなでやるという安心感や連帯感。
共同作業をしたことがきっかけで、それまではコミュニケーションを取ることに消極的で表情も暗かった人が積極的に周りとコミュニケーションをとり、表情も豊かになったケースもありました。
チームを築いていくために
チームを築いていくためには、スタッフの個性や特技を掘り起こすときと同様に、じっくり時間をかけて、PDCAサイクルを回していくことが一番の近道だと考えています。
実際にやってみないとわからないこともたくさんありますし、お互いのことを理解し合わねば見えてこないこともあります。
農家や支援員が作業を一つ一つ分解、スタッフを観察していくことで適任と思われる作業を任せる。
任せた作業をスタッフがよりスピーディにできるように環境を整えたり、スキルアップしていけるような工夫をしていきます。
また、作業中にスタッフ同士が声を掛け合ったりお互いの作業内容を共有することで「配慮」が生まれてくることがあります。
この「配慮」がチームとして1つの作業を行う際に、全体の流れを良くすることがあります。
当園でも以前は堆肥撒きを10a行うのに3時間かかっていましたが、チームとしてスタッフ同士がコミュニケーションをとって役割をそれぞれで決めて動くようになってからは半分以下の時間で出来るようになりました。
いかがでしたか?
これまで4回に分けて農福連携に関するお話をしてきました。
当園で実施して感じていることですが、農福連携に取り組み始めてから毎年のように当園も施設スタッフも進化をし続けています。
1つ1つの作業がどんどん早くなっていますし、スタッフのできる作業のヴァリエーションも増えてきています。
これからもどんどんスタッフの出来る作業を増やし、クオリティを上げていくことで工賃UPをしていきます。