自分のペースで社会へ

当園では色んなご縁で社会的に何かしらの課題を抱えている方が研修に来ています。

将来農業をしたい!と考えている方だけではなく、農業を通して生活リズムと体力をつけて自分の就きたい仕事に就くことを目標にしている方、まだ何も目標はないけれどとりあえず農作業をしながら自己を見つめて考える時間に充てたいという方などなど様々な目的で来ています。

今回のブログでは、自然農園MITUでどんな風に社会的に課題を抱えている方の研修を行っているかを取り上げ、農福連携などに興味がある方の1つの参考になれたらと思います。

とりあえずやってよう

当園に来ている研修生の方の多くは、県内の施設や団体経由での相談・依頼がきっかけになっています。

もちろん個人で問い合わせをしていただくケースもありますが、基本的には施設や団体と連携し、農業を通した研修プログラムを行っています。

研修プログラムと言葉はかっこよく表現していますが、実際には相談や依頼がきた時点で「とりあえずやってみましょう」というスタンスで私たちは受け入れています。

「少し話を詰めてからのほうがいいんじゃないか」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、実際に当人や施設・団体の話を聴きつつも実際にやってみないことにはわからないケースが多いと感じているので、とりあえず始めてみることから始めます。

途中、農作業を挫折したり合わなかったりうちとの折り合いがつかず辞めてしまうこともありますが、それはそれで“やってみてわかること”なので、結果オーライと考えています。

話し合いと作業観察

話し合いを重ねる(聴く)

「とりあえずやってみよう」というスタンスで始めていくのですが、もちろん本人や施設・団体との話し合いもじっくり行っていきます。

どちらかというと話し合いというよりも話を聴くのがメインですが、どんなことを聴いているかというと、

・家族構成
・悩み
・目標
・これまでの歩み
・本人の趣味/好きなこと
・苦手なこと
・研修の頻度
・研修費
・契約の有無
・施設、団体から見た研修生の性格と特徴

ざっくりとこのあたりを聴ける範囲で聞いていきます。
本人から最初から聞き出せることもありますし、信頼関係を築きながら徐々に聞いていくこともあります。

話を聞く際には、常に落ち着いてニコニコしているように心がけています。
相手にも自分自身にもこの心がけが一番負荷がかからないし、関係を築きやすいと考えているからです。

これは園主(佐藤)の性格もあるかと思いますが、医療福祉の現場で働いていたときに自然と身についた癖みたいなものでしょうか。

行動観察

話を聴くのと同時並行で、研修に来ている方の作業を遠くから観察することを行います。
これは、

・本人が目標としているものに向けてどんなことをしていくといいのか
・どのくらいの負荷をかけるといいのか
・どんなことが得意でどんなことが不得意なのか
・集中力はどうか
・波はあるのかどうか
・集団作業向きか個人作業向きか
・理解力はどのくらいあるか
・判断に迷いそうなときどんな行動を取るか
・(特に暑い時期)作業に夢中になりすぎて適度な休憩をする意識を持っているか
・体力的に作業を続けることが出来るか否か

などなどいろんな視点から観察します。
本人からしてみれば、ちょっと嫌なヤツかもしれません(笑)

観察しながら、MITUなりの関わり方を考えます。

自分のペースで社会へ

話し合いと観察を行っていきながら、研修生一人ひとりに合わせて作業内容とスケジュールを考えていきます。もちろん、やりながら「あ、やっぱり違うかも」と思った場合には軌道修正しながら行うようにしています。

例えば、ある研修生は自分自身の中で「数年後に就労支援施設で働く」ことを目標に掲げています。本人が「お金をもらうと心的な負担が大きくなって働けなくなる」というので研修費等はなしで本人のペースで研修に来てもらっています。

話を聞いたり行動を見ていくと

「自己肯定感」が低いこと(あるいは愛着形成がうまくいっていない部分がある)
自身で目標を高く設定しすぎて落ち込みやすいこと

などがわかりました。
なので、その人に作業をお願いする場合にはその人が掲げる目標の基準を(出来るだけ自然に)下げ、作業終了後に達成感を感じられるような工夫を試行錯誤しながら行っています。
作業の集中力が切れやすいタイミングでの声がけとか作業ミスをしたときにも本人が落ち込まずに「次に気をつけよう」と思ってくれるような言い回しも模索していきます。

それと同時に体力的に施設で働けるほどの体力がまだないので少しずつ体力がつくように力仕事を「嫌にならない程度」に任せています。

自分のペースで社会に出られるよう(復帰できるよう)背中をそっと押すくらいの感じでしょうか。

最後に

いかがでしたか?

私たちは、研修生の目標に対してああしてこうしてと指導していくよりも本人のペースで目標実現できるようそっと背中を押す、くらいの感じで取り組んでいます。

やる気のない人とか要望ばかりの人とか不平不満しか言わないような人はうちの研修は合わないだろうなと思います。
自分から変わろうとか目標を実現しようという人向きなんです。

支援の仕方にもいろいろなやり方や考え方があると思います。

それぞれのやり方や考え方で目の前で悩みや課題を抱えている方の背中を押していきたいものですね。

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