10年以上前から農業従事者の高齢化、耕作放棄地の拡大などが問題視されています。
特に農業従事者は年々減り続け、高齢化も加速しています。
農水省も新規就農者や農業従事者を増やすべく政策を打ち出していますが、なかなか増えない状況です。
今回は「農家がいなくなる?!それ大丈夫なの?」という話を取り上げてみようと思います。
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農家がいなくなる?それって大丈夫なの?
結論から言うと、現状、農家は減っても問題がないと言われています。
その理由は大きく3つあります。
①日本は少子高齢化&人口減少の時代に突入し、日本人の胃袋も小さくなったため
②農業の大規模効率化、機械化が進み、少人数で大量生産が可能になったため
③現状、農産物が溢れていて過剰供給の状態が続いているため
です。
良いか悪いかは別にして、大規模効率化や機械化はここ数年どんどん進んで、農業従事者1人当たりの耕作面積は年々増えています。
私が就農した頃は露地で1人1haというと「すごい面積…」と言われていましたが、2022年現在では2〜4haの面積を1人で行っている農家さんもだいぶ増えました。
また、近年では農産物の過剰供給により市場にモノが溢れているという状況になることが増えてきました。
モノが溢れているという状況になると、一部の力を持った産地以外の農産物は価格が安くなる傾向があり、結果として農業収入が増えないということもあります。
需要と供給のバランスから考えると、農家は減っても問題ないということになります。
ただし、里山や農地周辺の管理などこれまで農業以外の部分で担っていた人たちがいなくなり、里山や農地周辺の管理をする人がいなくなるのではないかと問題を指摘する人もいます。
農家はどのくらい減ってる?
では、農家はどのくらい減ってるのでしょうか?
農業センサスという農水省で5年毎に統計調査をしているデータを参照すると、基幹的農業従事者(主に農業を仕事にしている人たち)は
1960年頃:約1200万人
2015年:175万人
2020年:136万人
2020年の136万人のうち約7割は65歳以上の人です。
65歳以下は41万人です。
ものすごい減り具合&高齢化ですよね。
一方で、1農業経営体の耕作面積は年々増えています。
農家は増えてないのか?
一方で、新規就農や新規の雇用者は増えているのでしょうか?
こちらも農林水産省の統計を見ると、毎年5〜6万人増えているそうです。
しかし、毎年5〜6万人増えていても定着するのは1万人程度。
思いの外定着していないのがわかります。
理由は、色々とありますが、主に、
新規就農した後の経営が成り立ちにくい
2012年から「青年等就農給付金」(現、農業次世代人材投資資金)という、新規就農等する際に一定期間150万円/年を支給する制度が出来ました。
これのおかげで新規就農する人は増えたのですが、農業経営を安定させるのには乗り越えなければならない壁がいくつもあります。
安定した収量を確保、販路開拓、経理、地域との交流などなど。
これらの壁を乗り越えることが出来ず、離農してしまう人も少なくありません。
実際に新規就農した人の7割が農業だけでは生計を立てられていないという統計もあります。
2020年のデータでは、農家の平均所得は個人で約100万円、法人在籍で約300万円となっていました。
よそ者排除の独特な地域も
新規就農した地域がどんな特徴かによっても定着するかどうかが決まってきます。
よそ者歓迎で地域が暖かく向かい入れ、地域と新規就農者との関係が良好な場合は定着率が良いようです。
しかし、よそ者を排除する傾向のある地域ではやはり新規就農した後すぐに離れてしまう人もいるよう。
逆に、地域と馴染もうとしない新規就農者がいるのも事実ですが。
いずれにしても、「村がなくなる!」と周りにアピールしつつもよそ者排除傾向が強い地域もあるので、何ともいえなくなりますね。
農家が減ったその先には?
農家が減っても問題ないと言われていますが、農家が減ったその先には何が見えてくるでしょうか?
・大規模効率化や植物工場で効率的にかつ安定的に農作物が生産される
・全国規模の災害が起きた時は農産物が手に入りづらくなるかも
・地元産の少量多品目の野菜は手に入りづらくなる可能性も
・耕作放棄地は増えていく
という可能性が出てくるのではないかと個人的には思います。
ただし、新型コロナが蔓延した後、大規模農家(主に補助金で凌いできたところ)が倒産したり、資材価格や農機具の高騰を受けて規模を縮小するところも出てきました。
2022年現在、農業はある意味で転換期あるいは変革期を迎えています。
今後どうなるかは私たちも現場に身を置きながら注視していこうと思います。