2011年3月11日、あの日から8年が過ぎました。
テレビでは、「風化させてはいけない」といった内容で多くの特集が組まれていましたね。
私たちMITUが活動している仙台市沿岸も東日本大震災の津波で甚大な被害の出た地域です。
震災から8年、今の沿岸部の現状と私たちが考えていることを少し取り上げていこうと思います。
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震災から8年の現状
震災から8年が過ぎ、私たちのいる地域では海のすぐ脇に巨大な堤防、そして内陸側に名取市と仙台市の境目から
七北田川という川までの十数キロを縦断するかさ上げ道路が建設されています。
かさ上げ道路はまだ工事が続いていますが、今年の秋には完成する予定だそうです。
震災前と比較するとかさ上げ道路が出来たことで風景が全くといっていいほど変わりました。
かつては海側に松林が生い茂り、海までの距離が近いように感じていましたが、かさ上げ道路が建設されてからは
かさ上げ道路の海側と内陸側ではまるで別の地域にいるような感覚さえ感じてしまうほど違和感を感じます。
復旧・復興の工事は概ね終わり、震災後数年間往来を続けたダンプやあちこちにいた重機も数が減り、
工事関係の人たちも職務を終え別の地へ。
私たちのいる地域も地元の人たちが往来するくらいの少し静かな雰囲気になりました。
時間が人を変える
テレビでは時折、「場所や建物といったハコモノの復旧復興は終りを迎えつつあるが、人の心や地域の復興
はまだまだこれからだ」という話を耳にしました。
また、「震災直後と比べて時間が立てば立つほど人は変わっていくものだ」とも。
これは実際に私(佐藤)が地元にいて、とても感じることです。
かつては「海が怖いから」、「次世代に同じ悲劇を繰り返さないようにと二重防波堤(海側の防波堤と内陸側のかさ上げ道路)の建設を」と
強く望んだ人たちがいつしか「あれが出来てから海が遠くなった気がする、何故あのようなものを立てようと思ったのか」と疑問に
思うようになったり、
かつては「いつか地元に戻りたい」と強く願っていた人が仮設住宅で出来たコミュニティーに加わり「生涯このコミュニティーの中で
過ごしていきたい」と新しいコミュニティーへ定住したり、
震災直後に考えていたこと・思っていたことが時を経て変わってきました。
決して変わることが悪いとか良いとかではありません。
時が過ぎれば、記憶が、経験が、感情が、想いが変わっていくのだと思います。
ある心理学者は「過去の出来事を出来事として一定の距離を保てるようになったとき、その出来事は生々しい記憶ではなく、
語れる記憶となる。語れる記憶となったものは、今の自分の感情や経験などで変遷していく」と述べていました。
「風化させてはいけない」のではなく「教訓として」生かしていく
テレビや地元の方のお話でも「震災を風化させてはいけない」と何度も耳にしました。
しかし、人の記憶は風化していくものだと思います。
あの震災の時に経験したことは自分自身の経験として記憶として残っていくと思います。
しかし、東日本大震災で私たちが経験した悲劇や出来事を風化させないことがいつかまた来る災害に
新しい世代の人達が備えられるときに役立つかどうかはわかりません。
ある方が話していたことを鮮明に覚えていますが、「私(東日本大震災を経験した人)は関東大震災や
阪神淡路大震災、雲仙普賢岳噴火、広島の集中豪雨被害といった自然災害を風化させないようにしているか
というと記憶の中で風化されていく。テレビで阪神淡路大震災から◯◯年、と聴くともうそんなに経ったのかと
思う。だから、東日本大震災を経験していない人からするとそれと同じような感覚かもしれない」と。
私たちが経験し学んだことを風化させないのではなく、「教訓」として語り伝えることのほうが
大切なのかもしれません。
これからに向けて
震災から8年が経過し、昔から続くコミュニティーが再開したり、新たにコミュニティーが形成され、交流が生まれたりしています。
その中で災害公営住宅に住む方々も大勢いらっしゃいます。
先日、とある災害公営住宅の方とお話をする機会があり、災害公営住宅の現状やそこに住む方の想いを聴きました。
災害公営住宅には東日本大震災で被災した人が中心に若い方から高齢の方まで様々な年代の方が住んでいます。
震災前に別々の地域で住んでいた人たちが震災をきっかけに公営住宅に入居し、
新しいコミュニティーが生まれたのです。
そこには震災から8年経過すると、いくつかの課題も出てきているそうです。
1つは高齢の方が多く、「買い物難民」が出てきていること。
公営住宅から少し離れたところには小さいスーパーがあるのですが、そこまで買い物に行くのも
大変な方が増えてきているそうです。
震災で家族や親戚を亡くされ、ひとり暮らしや高齢夫婦2人で生活しているケースもあり、
これから買い物難民が増えてくる可能性もあるそうです。
2つ目には住民同士での交流が少なく、引きこもり(予備軍も含む)の方もいるということです。
元々震災前のコミュニティーの中で生活してきた方が新たに公営住宅の中のコミュニティーに
入ることが難しいケースもあるそうで、孤独死の危険性も考えられるそうです。
地域で支え合っていけるコミュニティーにしたいという想いが町内会にはあるようですが、
なかなか地域課題の解決には至っていないようでした。
お話を聞き進めていく中で、町内会の方から「町内会主催のお祭りに畑deマルシェとして出てくれないか」という
相談がありました。
正直、いろいろと悩み、MITUの2人で話し合いも繰り返しました。
自分たちに何が出来るのか、私たちの活動で何かしらの課題が解決できうるのか。
そんなことを考えました。
最終的に町内会の方々の熱い想いと同じ被災地での課題を解決するために少しでも力になりたいという
想いもあり、お手伝いすることになりました。
予定では、5月18日の土曜日から定期的に町内会のイベントに参加させていただきます。
買い物難民と呼ばれている方へのお手伝い、そして私たちがお手伝いすることで
地域の方同士の関係作りや交流が生まれればと嬉しいなと思っています。
これからを向いて一歩一歩できることをしていきたいと思います。