皆さん、こんにちは! 仙台市宮城野区で農業を営んでいる農園MITUです。
2023年冬の新聞で、ついに仙台市若林区の集団移転跡地利活用事業者が決定したというニュースが報じられました。
第一回目の事業者決定から約5年。これで集団移転跡地の全エリアで事業者が決まり、沿岸部全体が新たなスタートラインに立ったような気持ちです。
今回は、私たちが集団移転跡地の畑で直面している「土作り」という大きな課題について、皆さんと共有したいと思います。
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集団移転跡地の土作り、「そんなにかかるの?」という疑問
集団移転跡地で畑を耕していると、日々痛感するのが「こりゃ、畑として機能するまでには相当な時間がかかるぞ…」ということです。
同じように集団移転跡地で畑を始めた周りの農家仲間とも、この話題はよく上ります。
私の個人的な見解では、家庭菜園レベルで野菜を育てられるようになるまでには4〜5年、営農レベルで安定した品質と収量を確保できるようになるには10年ほどの時間が必要ではないかと考えています。
以前、別のブログ記事(https://sizennouenmitu.com/archives/2612)で、ほ場整備事業が行われた畑の土作りについて触れましたが、集団移転跡地の土壌はそれ以上に時間を要すると推測しています。
この話をすると、よく「え?土作りってそんなにかかるんですか?堆肥や肥料を入れればすぐに野菜が収穫できるんじゃないんですか?」と驚かれます。
集団移転跡地を借り受けた当初、私も3〜5年ほど土作りをすれば、その後は比較的スムーズに野菜が育つだろうと安易に考えていました。しかし、現実はそう甘くありませんでした(笑)。
家庭菜園レベルと営農レベルの違いとは?
ここで、家庭菜園レベルと営農レベルの基本的な違いについて簡単にご説明します。
その違いはシンプルに、一定の収量を一定の品質で安定的に提供できるかどうかだと考えています。
近年、異常気象が頻発しており、安定供給が難しい年や地域もありますが、ここでは一旦その点は考慮しません。
- 営農レベル: 一定の品質と収量を安定的に提供できる
- 家庭菜園レベル: 必ずしも安定した品質や収量を確保できない
この観点から仙台沿岸部の現状を見ると、
- ほ場整備された圃場: 家庭菜園レベルから徐々に営農レベルへと移行してきている
- 集団移転跡地: 家庭菜園レベルの畑が出始めた段階
と言えるでしょう。
普通の畑でも土作りは重要
篤農家と呼ばれるベテランの方々や、私がお世話になっている師匠も口を揃えて言います。「長年使ってきた畑でも、土作りを間違えれば収穫量や品質は安定しない」と。
一般的に、畑として使われてきた場所でも、正しい土作りをしようとすると、3年ほどで変化が現れ始め、5年ほどで状態が良くなり、10年で次のステージに進むと言われています。
このことを考えると、集団移転跡地の土を「畑」として使えるように改良していくには、本当に長い時間が必要だということがご理解いただけるかと思います。
堆肥や肥料を入れれば良い、というわけではない
「堆肥をたくさん入れればいいんじゃないか?」「化学肥料を使えばすぐに育つのでは?」「新しい土壌改良材を試してみては?」といったアドバイスをいただくこともあります。
私自身も様々な方法を試しましたが、集団移転跡地のような土壌にただ堆肥を大量に入れたり、化学肥料に頼ったりするだけでは、ある程度の野菜を育てることはできても、異常気象に非常に弱く、収穫量も品質も安定しないということを身をもって経験しました。
何でもかんでも資材を投入すればすぐに解決するわけではなく、やはり時間をかけて土壌そのものを改良していくしかないと考えています。
土を改良していくための3つの視点
具体的な土壌改良の方法は企業秘密…ということで(笑)。
基本的な考え方としては、以下の3つの視点から土作りを進めています。
- 土の物理性: 硬さ、保水性、通気性などを改善する
- 土の化学性: 土の中の栄養バランスを整える
- 土の微生物性: 土壌微生物の多様性を高め、活性化させる
土壌分析を行いながら、それぞれの場所の土壌特性に合わせて、きめ細やかな対策を検討しています。
最後に:それでも故郷の土と向き合う
仙台沿岸部は、他の地域の農家さんから見ると「かなり厳しい立地」「もっと他の地域で農業をした方が生活しやすいのではないか」と思われることが多いかもしれません。
私自身もそう思うことがあります。
しかし、生まれ育った故郷への愛着と、「ゼロから土作り」という貴重な経験ができる機会に恵まれたことに感謝し、楽しみながらこの挑戦を続けています。
これからも、集団移転跡地の土壌改良の進捗状況や、そこで育つ作物の様子などをブログで発信していきたいと思いますので、ぜひ応援していただけると嬉しいです。
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