当園が農業法人にしたワケと失敗談

私は2013年に新規就農、2017年に農法業法人を立ち上げました。
農業で法人化するタイミングは人それぞれあるかと思いますが、当園では”見切り発車”で法人を立ち上げました。
何故、私たちが農業法人を立ち上げたのか、法人立ち上げ後の失敗談も含めてお話していきます。
これから新規就農で農業法人を立ち上げようと考えている方、そもそもなんでMITUは法人にしたの?と素朴な疑問を持っていただいている方にお届けします。

私たちが農業法人にしたワケ

何故、MITUを会社にしたのか? 

理由は、2つありました。

1つはソーシャルファームを作っていくためでした。
元々、私(佐藤)は病院や施設で働いていた中で障がい者の方の生きがい作りの場や就労の場を農業を通して作りたかった、というのが根底にあります。 

就労の場を作るには、法人化が必要でした。
法人としてきちんとした経営を行うことで働いている障がいのある方にきちんとお給料を払う。
また、障がいのある方の雇用を増やすためには、取引先を増やす必要があり、個人対法人ではなく、法人対法人での関係を構築することが必要だったんです。 

個人事業をしていたときに、市内のNPOさんとやり取りをしている中でも痛感しました。 

もう一つは販路を拡大していくためでした。
ソーシャルファームを実現させるためには、販路を拡大していくことも必要でした。
販路を拡大していくためには法人格にしたほうが取引しやすくなると考えたんです。

また、自分が就農したとき、栽培をしながら営業活動をし、さらに出荷するために配達するという作業がとにかく大変でした。
なので、法人をきっかけに新規就農者が1人で出来ないことを出来るようにしたり、法人やグループでしか取引できないところと取引できるような形にすれば、みんな上手くいくのではないかと思ったんです。
→こちらは色々試しましたが、本当に失敗しまくりました。今は地域の農家さんと一緒になにかするということはせず、めまぐるしく変化する農業事情に合わせながら自分たちも変化をしている感じになっています。将来的に、もっと基盤を固めた際には、また地域での連携を模索していこうと考えています(2022年1月追肥) 

法人化=規模拡大?

農業法人にすると、多くの方から「これからどんどん圃場を大きくしていくんだね?!」と聴かれます。
もちろん、機を見計らって規模を拡大していくつもりではいます。

一人でも多くのお客さんに野菜を届けたいですし、働きたいという障がいのある方々の働く場や就労支援の場も増やしたい。
そんな夢をずっと抱いています。

一方で、規模拡大するということは、かなり難しいことだと感じています。
田畑を借りるだけなら、一度新規就農した身であれば、比較的簡単。
問題は、規模を拡大した際に、面積を増やした分だけ収穫量を上げられるか、です。
これがかなり難しいと考えています。

栽培スキル、人員配置、スタッフのスキル、機械設備などいろんなものが関わってくるからです。
当園では、障がい者スタッフさんのスキル、自分自身のスキルのレベルと設備へ投資できるタイミングで少しずつ面積を拡大していきます。

農業法人立ち上げ失敗談

実は、私たちが農業法人を立ち上げる際、色々失敗したなあと思うことがありました。
その中のいくつかを赤裸々に話そうと思います。

株主は1人がいい

はい、そうです。株主は1人がいいです。
実は、当園は株主が3人います。

大きい会社ならともかく立ち上げたばかりで株主が3人もいるのは正直大変でした。
何が大変だったか?

全員が全員、志が同じで同じ熱量をもっているわけではなかったからです。
今考えれば、人それぞれ人生ありますから、当たり前といえば当たり前のことなんですけどね。

年月が経てば経つほど小さなほころびが大きくなりました。
ほころびが大きくなると収集はつかなくなります。
志が変わらないまま前を見ようとする者、お金のことしか考えていない者、事業そのものに興味を失せやる気もなくなってしまった者。
みんなバラバラになりました。

なので、事業立ち上げるときや法人化する時は基本的に「1名で立ち上げる」ことをおすすめします。

立ち上げの瞬間ビビる

実は、法人を立ち上げる時、仲間が5人いました。
農業の生産部門と加工部門に分かれて、それぞれで事業を立ち上げようと思ったんです。

でも、いざ立ち上げようと動き始めるとみんな「ビビり」始めて結果的に2人を残しいなくなりました。
起業というと最初は夢あふれるビジョンが広がり楽しくなるんですが、そのビジョンに向けて泥臭い行動や数字とにらめっこするようになると「失敗したらどうしよう」という不安に苛まれるんです。
この不安に苛まれると起業はできなくなります。
不安にならないほどに情報収集などの調査をしっかり行い戦略を立てられると良かったのですが、残念ながら全員その力もまとめる能力もなかったんです。

起業家に求められることは何ですか?と聴かれたら、いちばん大事なのは冷静な判断踏み出す勇気だと考えています。
やみくもに一歩踏み出しても失敗する確率が上がってしまいますから、綿密な調査・情報収集を行ったのちに、一歩踏み出すことが大事なのではないかと。

農業法人はおすすめ?やめたほうがいい?

結論から言うと、自身の経営ビジョン、栽培スキルや組織力に合わせて必要だったら法人化すればいいと考えています。
自分のやりたいことを実現するためには法人化が必要であれば法人化。
個人で突き進む形がベストなら個人事業。
多種多様な働き方があるように、自分のステージに合わせて形態を変えてもいいと思うんです。

周りから勧められて…

法人化する際に一番してはいけないのが、「周りから勧められて」です。
自分で判断できないようであれば、法人化はしないほうがいいです。
特に、法人化すると補助金を受けやすくなったりもするので、そういった部分で法人化を勧めてくる人もいます。

数年前、震災直後。
被災地沿岸は、高齢化と離農を理由に地域で農業法人の設立を勧める動きがありました。
地域の組合やグループは組織化。営農組合や家族経営の法人化が進みました。 

しかし、震災から10年過ぎ、2021年後半に差し掛かった頃からでしょうか。
農業法人の倒産が目立ち始めました。
助成金や補助金頼みの経営、規模を拡大しても栽培スキルがない故に収量が伸びず売上も伸びない、雇用しようにも応募する人さえいないという法人がどんどん数を減らしてきているんです。
これまでは補助金や助成金を活用していた法人は行政からの支援も受けやすかったのですが、その支援も受けづらくなってきたと聴きます。

準備なしの法人化

起業に必要なのは、冷静な判断と一歩踏み出す勇気と述べました。
事前準備なしに法人化すると失敗する可能性が高くなります。

あまり例に出したくはないのですが、地元の有志が震災後に立ち上げた農業法人がありました。
震災復興の希望の星とも言われ、周囲からはかなり期待されていた法人でした。
しかし、創業2年で倒産。
行政の補助金を活用し震災復興を掲げてのスタートでしたが、栽培技術の面や販路確保等で課題が多く、黒字の目処が立たなかったことから倒産に踏み切ったと聴いています。
「行政が勧めてきたから」とか「◯◯(大手企業)が面倒見てくれるから」とか誰かがなんとかしてくれる、といった他人任せがこの事態を招いてしまったことも一つの要因であるとも言われています。

いかに事前準備が大切かをこの時学びました。

いかがでしたか?
MITUが法人化した理由と失敗談、そして法人化する際の注意点をまとめてみました。
これから法人化する予定の方や農業法人って?という方のご参考になればと思います。

関連記事

  1. 農家がいなくなる?それって問題あるの?

  2. もう「◯◯農法」という考え方は古い?本当の農作物の育て方と考え方

  3. 「無肥料」という言葉の難しさと誤解

  4. 農福連携での作業の安全面はどうする?-農福連携のお話④

  5. 美味しくて天候にも強い野菜作りにはアミノ酸肥料あり!?

  6. 生落花生の収穫体験